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「じゃあ、この噂については……」
「完全否定!」
「……まっ、あたしは信じてたけどね! そんな根も葉もない噂話に、このあたしが振り回されるわけないし?」
肩をバシバシと叩きながら友瀬が笑う。
いやいやいやいやいや、それ絶対嘘だよね?
だって一番最初、私と海璃が付き合ってる前提で話してたし!
私は心の中で全力のツッコミをした。
「はぁ……にしても、本当嫌になっちゃうな」
「橘くんとの噂?」
「うん。そりゃあ、私と海璃は幼馴染みでずっと一緒に育ってきたし、家も隣同士だったりで、なかなかに付き合いは長いと思うよ? でも私たちの間に恋心なんて存在しない」
そう、私と海璃はお互いを異性としてまったく意識していない。
つまり恋愛感情なんて一切ないのだ。
二人の距離感は昔からずっと変わらなくて、それが恋心に発展――なんて漫画のような展開にはならず、今も幼馴染みであり家族のような距離感は続いている。
おかげでからかわれたりすることも多く、小学校や中学校でも「お前たち本当はデキてるんだろ」とよく言われたりしていた。
その度に海璃と二人して否定してきたのだ。私たちの間に恋心なんて一ミリもないんだ、と。
それなのに、まさか高校でもこうして再びからかわれることになるなんて、本当の本当に――。
「――迷惑以外の何物でもないっ!」
「い、言うね……」
「だって一回や二回じゃないんだよ、こうやって間違われるの。慣れるっていうのとはちょっと違うけど、さすがにうんざりしてくるってば」
「そんなもの?」
「そんなものなんです」
友瀬は「そっか」と返事をしたあと、ちらっと横目で私を見てからぽつりと呟いた。
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