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「……ここまで言われちゃうと、そろそろ橘くんも可哀想かも」
「え? 何か言った?」
声が小さすぎて何を言ったのかよく聞こえず、私は聞き返した。
だけど友瀬は首を横に振って「なんでもない」と答えると、きょろきょろと辺りを見回し、他に誰もいないことを確認してから声をひそめて言った。
「あのね、乙羽。落ち着いて聞いてほしいんだけど……この噂にはある人物が関わってるみたいなの」
「ある人物?」
「というよりも、その人が原因というかなんというか……」
原因……? じゃあ、この噂を流したのはその人ってこと?
友瀬のこの言いづらそうな雰囲気といい、何かを知っていそうな口ぶりといい――まさか。
「ねぇ、トモ。その人のこと、知ってるなら教えて! あることないこと好き勝手言われて、黙ってるなんて私にはできない」
「乙羽……」
「私が迷惑してるように海璃だってきっと迷惑してるに違いないんだから、一言言ってやらないと気が済まない……っ」
ぐっと拳を握りしめる私を見ていた友瀬はやがて小さな息を吐き、観念したように口を開いた。
「実は……」
そしてそれは想像もしていなかった人物の名前で――私は絶句することになるのだった。
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