ここから、始まる。

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「海璃っ!」 幼馴染みの名前を呼びながら、勢いよく教室のドアを開く。 するとそれまで賑わっていた教室がしんと静まり、みんなの視線が一斉に私へと向けられた。 普段ならそのことに多少なりとも恥ずかしさを感じたりするけど、今はそんなことを気にしている余裕なんかなくて。 私はただ目的の人物――海璃の姿だけを捜していた。 あのあと噂の真相を友瀬から聞いた私はまだ食べ終わっていないお弁当のことも忘れて、急いで教室に戻ってきたのだ。 すべては何を考えているのかわけのわからない幼馴染みに、一言文句を言うために。 だけど――。 「いない……?」 どんなに捜してみても、海璃の姿を見つけることはできなかった。 おかしい。昼休み終了十分前には、ほぼ必ずと言っていいほど教室に戻ってくるのに。 昼前まではきちんと教室にいたことはすでに確認済みだから、それなのにいないということは……。 「……保健室で寝てるパターンか」 海璃はものすごい気分屋だ。 真面目に授業を受けていたかと思えば次の授業では机で爆睡していたり、さっきまで笑っていたのに次の瞬間には不機嫌になっていたりといった感じに。 そんな最近の海璃のお気に入りの場所は、堂々と惰眠を貪れる保健室。 このまま放置していれば高確率で放課後まで眠りこけるだろう。 そうなると、海璃にどうしても一言言いたい私がそれまで待たなければならなくなるわけで……。 「いやいやいや、今言わないと私の怒りが収まらないって」 誰に言うでもなく自分ツッコミをしながら、私はくるりと体の向きを変えた。 目指すは保健室。 叩き起こしてでも、文句を言おう。 そう心に決めて歩き出そうとしたそのとき、前方から現れた人物に驚いて足が止まってしまうのだった。 「柴咲(しばさき)」 「は、原田くん……!?」
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