赤の向こう側

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敷島公園から利根川沿いを散策して草木を眺めたり、国道十七号線へ出て、立ち並ぶ商業施設や行き交う車の流れを感慨深く見つめた。 時間が経つごとに、目が馴染んでくる感覚があった。 全てが明るく、浮き立つように見えて、手術のありがたみを肌で感じ続けた。 夕方になって、アパートに帰る。 夕食は、ベイシアで買った〈松〉幕の内弁当。 気分が良く、いつもよりワンランク高い弁当に手を伸ばしたそうだ。 「ゆっくり食べようなんて、テーブルについて、リモコンでテレビの電源を入れたんだ。そしたら、目の前がオレンジ色に光ったんだって」 それは、さながら閃光のようだったという。 「何、その光?」 「そのときは、天井の蛍光灯が瞬いたくらいにしか思わなかったみたい。あまり気にせずに、続けて、テレビの音量を二つ上げたんだ。そしたら・・・」 そうしたら、閃光が二回走った。 オレンジ色の光が、目を貫いた。 「何それ、リモコンから光が出てるってこと?」 「そう。どうやらリモコンが故障して、光るようになったんじゃないかって。まあ、放っておけば直る、くらいにしか思ってなかった。で、インスタントの味噌汁を飲もうと思って、ヤカンでお湯を沸かそうとしたんだ。コンロに火をつけた途端、ボオォって」
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