赤の向こう側

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そう、ありえない。人間には、赤外線が見えないのだから。 人間には可視光線の領域がある。 それは、光の波長が三百八十から七百八十ナノメートルの間だけ。 目に飛び込んでくる光の周波数を網膜が感知して、紫から赤へと連なる七色の色調を認識するのだ。 しかし、赤外線の波長は、七百八十ナノメートルから一ミリメートル。 すなわち、人間が絶対に見ることのできない電磁波なのだ。 でも、ヤマトは見えたのだという。見えないはずの光が。 「それは、レーなんとか手術のせい?」 「分からない。ただ、手術の翌日から見えるようになったことは確かなんだ」 そんなことがあるのだろうか?  にわかには、信じがたい。それでも、ヤマトの体験談はまだ続く。 赤外線が見えると言っても、すべての赤外線が見えるわけではないらしい。 リモコンの光や、炎の周囲をまとう灯りが見える程度。 どうやら、近赤外線と呼ばれる、比較的可視光線に近い領域の電磁波を捉えることができるようだった。 ぼんやりと、オレンジから黄色っぽく感じるのだという。
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