赤の向こう側

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家を出てから会社にたどりつくまでの通勤時間は、約一時間。 年をとるにつれ、この時間がやたら長く感じるようになってきた。 特に、越後曽根駅から新潟駅までの、電車に乗っている約四十分間は、気が遠くなるほどに長い。 車内は冷房が効いているから、梅雨明け間近の蒸し暑いこの時期も、快適ではある。 だがそれは、シートに座ることができればの話。 涼しい中、お気に入りのピーター・ストラウブを開いて幻想の世界に浸れれば、極上のプライベートタイムになる。 勤労意欲だって湧く。 ところが、座ることができなかった場合は、ギュウギュウ詰めの車内で痴漢に間違われないよう必死に両手で吊革をつかみ、冷房どこへやらの過酷なおしくらまんじゅうが始まるのだ。 これでは、仕事前に体力の半分を使い果たしてしまうようなもの。 当然のごとく、勤労意欲は、ほぼ無くなる。 だから。 七時十一分発の電車、二両目の一番前のドアに飛び込んで、真っ先に空いているシートを探したのだが・・・満席だった。 今日もおしくらまんじゅうかと、意気消沈しドア近くの吊革につかまる。
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