第5章 戦国のメリークリスマス

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 信長は男女合わせると二十名以上もの子供がおり、末の男子はまだ赤子で(えん)という、また少し変わった幼名を付けられていた。  元服前の幼子や姫も母達と共に美々しう着飾り父の帰りを待つ。   「お帰りなされませ」    他の家臣達に交じり出迎えた乱法師は、出陣した日と変わらぬ姿で帰城する信長を見て安堵した。  先ず広間で留守居の主だった者達に型通りに変わった事はないかと訊ねた後、沢山の土産らしき品を運ばせ乱法師の前に並べた。 「これは女達に渡せ。バテレン共からも色々貰ってな。沢山ある故、後で皆で分けよ」  奏者番として重用され始めている彼は、諸将の謁見の取り次ぎ、献上品などの披露といった、主と家臣を繋ぐ大事な役目を担っている。  宣教師達からの献上品は沢山の南蛮菓子や葡萄酒などであった。   「ナタルとかナタウとか申しておった」  唐突さに戸惑う者もいるが、余計な言葉を省いて声を掛けてくるのを、主の気さくさと乱法師は捉えている。 「ナタウとは何でございますか? 」 「奴等が信仰するキリストという男が生まれたのが今日だそうじゃ。ミサを行ったり物を贈ったり、酒や菓子を食べて祝うとかで、こんなに持ってきよった」 「ナタウ、何やら楽しげでございますね。バテレンの祭りなのでございましょうか」   「Feliz Natal! フェリスナタウと言って祝うらしいぞ」  久しぶりに話せるのが嬉しく信長も楽しげであったが、ふと突然違和感を覚えた。   此処にいるべき人間がいない──  今、口にすべき事ではない。   沢山の土産品を妻達に渡しに行くというので奥御殿まで供をした。  意外とまめな所がある信長は女達への土産は欠かさない。    
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