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完璧なルージュで厳しく言い放ちながらもエレガンスを崩さないのは、シンデレラである。
「私なんか、自分では最早プリンセスでも何でもないように思えるんですけどね…」
予想外の反応に驚きながら、おずおずと本音を口に出してみたのは、ベル。
皮切りとなった一言目を口にした彼女は、結婚してからプリンセスと呼ばれるようになった上に、きっかけとなった夫も、好きになった時は野獣だったということもあり、未だに「プリンセスとしての自分」というものをうまくのみこめずにいる。
「私もだよ!! 私なんか、完全に森の娘なのに…っ」
ベルの言葉に強く頷いた眠り姫は、口惜しげな表情で拳を握りしめている。
「……あの」
唐突に沸点をこえてしまったような騒ぎの後、皆がやや落ち着きを取り戻したところで、シンデレラが口をひらいた。
「きっと皆、今まで誰にも言えなかったことがあると思うの。
でも、ひょっとすると、ここでならそういうことも言えるんじゃないかしら」
はっと、各々の目が大きくなり、輝きを増す。皆が同じ気持ちなのは明らかだった。
「…ごめんなさい。私、何だかうれしくて…ずっと言いたかったことを、もう我慢できないの」
麗しの眉をひそめて、シンデレラが声を低くする。
「我慢なんかしないで、言ってちょうだい!」
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