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「…柚莉さん、俺よりこの家に馴染んでるよね」
同じことを思ったらしくて、金城くんはそうやって呟いていた。
「そんなことないよ。最近やっとここ来ても緊張しなくなった」
柚莉さんは照れ笑いしながら立ち上がると、ヒラヒラと手を振った。
「じゃあ、夜ご飯出来たらまた声掛けに来るね」
パタン、と扉が閉じて、部屋に静寂が訪れる。
その瞬間、ふーっと金城くんが息を吐いて机に伏せた。
「いつから、柚莉さんって家にいるのが当たり前になったんだろ」
顔は見えないのに、傷ついてるのがわかる。
好きな人なのに自分の家族みたいになっていくのって、どんな感覚なんだろう。
きっと今の金城くんは戦ってるんだろう。
こんな姿見てたら、やっぱり一生隠し通さなきゃって思う。
私が好きだなんて言ったら、また困らせてしまうから。
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