437人が本棚に入れています
本棚に追加
「雛ちゃんもほら!食べて!」
柚莉さんに声をかけられてはっとして、慌てて箸を取った。
「あ、じゃあ、いただきます…」
箸でハンバーグを切って、ふーふーと冷ましてから口に運んだ。
ホロホロとお肉が溶けて、肉汁が染み出てきて、デミグラスソースがとろとろで。
美味しいはずなのに。
なのに。
…味、しない。
「どう?」
緊張の面持ちで私の事を見つめてくる柚莉さんに、美味しいです、と返すとほっとした表情をした。
きっと美味しいはずなのに。
美味しいはずなのに、なんで味しないの。
どうしてー…
「小倉さん?」
ハンバーグを食べたまま項垂れていた私に、隣から声がかかる。
「大丈夫?体調悪い?」
ー…なんで気づいてくれるの。
目の前に柚莉さんがいるんだから、私の事なんて放っておけばいいのに。
どうして、全部気づいちゃうの。
最初のコメントを投稿しよう!