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 この「奪われていく感じ」は、やたら整っているせいで嘘くさい、ウカの顔を見た時の気分となぜかよく似てる。 「キョウちゃん、アンナと別れたって? 今夜あたり行っていい?」  俺は無視を決めこんでいたはずが、つい振り返り、その顔をしげしげと見つめた。  ミルクティーみたいな甘ったるいカラーのはいった髪が、奴の人形じみた顔をさらに現実から乖離させている。見た目がほとんど二次元だ。  そんなナマミ感のないウカの目は、覇気がないのがデフォルトで、世の中には見るべき価値のあるものなんか何一つないからこれで充分、とでも言いたげな半開き。  ところが、本日は瞳孔が開ききってキラキラしている。おまけに普段は白いのを通りこして青白い頬が、紅潮してピンク。  絶好調だった。  こいつは、俺が調子が悪ければ悪いほどイキイキするシステムか。  ウカは、ふわふわと頭の弱そうな笑みを浮かべる。それは舌にまとわりつくような濃厚な甘さの生クリームを思わせる。  胸ヤケがする。  ウカは俺の腕にからみつく。 「なあ、行っていいだろ? 前みたく言う通りにするし。カズイとヨージが変なルールを決めてから、ちょー溜まってる」  汚物から逃れるように手を振り払った。  ウカを殴りたい。容赦なくボコボコに。そのまっすぐな鼻筋が歪み、顔が倍に腫れあがるくらいに。     
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