04

2/11
105人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
 物理的にヒトのクチが気持ちいいってのは当然あるが、それ以外に、かつて虐げていたウカを、今や上等なオンナみたく扱っているカズイやヨージに、制裁のようなものを与えたいのかもしれない。  そして「優しいきれいな宇加見くん」だと思いこんでいるアンナ(俺をふったうえ、よりにもよってウカに告りやがった)への報復的なものも、たぶんある。  なんて自分の感情を分析しながらも俺は、最近使用した形跡がまるでない父親の書斎に入った。デスクの引き出しを開けると、現金入りの封筒が入っていた。  金が勝手に湧いて出てくる奇跡の引き出し! やった!……なんてね、いつ入れているのか、振込でいいって言っても、生活費はこんな風にキャッシュで渡される。その行為自体に何か意味がこめられているのか? 例えば罪悪感が軽減されるとか?  紙のお金をゲットしてからも、オヤジの椅子に座って、しばらくそこでぼーっとしてた。  それから、壁の一大ミュージアムをしみじみ鑑賞した。随分昔に母親が、父親へのあてつけのようにやみくもに貼った何十枚もの家族写真。その中に、なぜかカズイとウカと俺の三人で撮られた写真が一枚だけまざっていた。  その日、同じ学校に通っているというだけで何かの事情が働き、たまたま俺の母親が三人をマナビ学舎に連れて行くことになったんだった。ヨージは中学からの外部生だから、当然そこには存在しない。     
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!