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 家に帰ると、今朝まで荒みきっていた家の中がきれいさっぱり片付いていた。親が定期的に頼んでいる家事代行サービスが来る日だったと思いだす。  冷蔵庫を開けると、ファミレスばりにセッティングされた夕食が、ラップをかけられ用意されていた。俺はそれを見なかったことにして、買ってきたコンビニ弁当を食べた。そして、食後のデザートにマルチビタミンの黄色い錠剤を一錠、口に放りこむ。  ここ最近、自分の血縁者を誰一人としてお見かけしない。  父親は例外的に、テレビの中でたまに生存確認ができる。奴のお仕事内容は、情報番組のコメンテーターや、大学で何か教えたり、シンポジウムに出たりだが、その実態は俺にはよくわからない。(だいたい「シンポジウム」って何だ?) 「自分の親が出るかもと思うと、ゆっくりテレビも見れない」とぼやいていた兄は、この春からハワイの大学に留学した(遊ぶ気、前面に出しすぎ)。  母親はというと、その様子見という名目で、だいぶ前から兄のところに行ったきり。帰ってこない。そんなこんなで高3の俺は今、この家で一人暮らし状態だった。     
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