キキキむらさキ

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キキキむらさキ

 色の話をしたい。  一番最初に彼女の指の強い色を好きだと思った。マットに塗られたこっくりと深みのある青みの紫。菫というには主張する、ラヴェンダというには人工的な。 「気に入った?」 「うん。好き」  カウンタ越しにふわっと笑った顔も好きだと思った。  目が覚めると彼女の裸の肩を抱いていた。その丸いカーブをしばらくながめ、そっと身を離し布団をめくると、何も身につけていなかった。一瞬血の気がひいて、あたりを見回す。小さなゴミ箱に使用済みのコンドームが捨てられていた。よかったちゃんと避妊した。  床にちらばった服をひろっていると彼女が目を覚まし、「おはよ」と言う。 「おはよ」 「もういくの?」 「うん。泊めてくれてありがとう」  化粧の落ちた顔がふわっと笑った。おいでと手招きされる。軽くハグして頬にキスしあった。 「七尾くん、今日もサルーンでるの?」 「うん、早番」 「今日はほかに誰でるの?」 「サエキさん」 「え、やだ、マジか。夜予定ある。しくった」  彼女は心底悔しそうに言った。 「みりんの彼氏、かわいそう。蟹もつけたのにサエキさんに負けてる」     
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