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*1st*『現状』
都会の夜は明るい…
もうちょっと暗くってもいいのに
「…うん、今行くから。」
スマホの電源を落とすと私は、目的の飲み屋目指して街中を歩いていった。
毎日のようにこの街では、大勢の人が賑わっている。上京してきたばかりの頃は不慣れで、大っ嫌いだったはずの光景が、今では寂しさを埋めてくれる一つとなっている。
…あ、ここかな。
気がつくと、目の前には目的地の飲み屋の名前が書いた看板があった
…
入ろう。
…
中に入っても、外と代わり映えのしない賑わいだった。サラリーマンやらOLやらが馬鹿みたいに騒いでる。
「お客様何名ですか?」
そんな店員の声も微かにしか聞こえない。
「あ…友人が先に来てるみたいなんですけど、、」
「これは失礼しました。友人様のお名前伺ってもよろしいですか?」
普通の飲み屋にしたらすごく礼儀正しい店員だな。店長のしつけがいいんだな。
「あの…お客様、友人様のお名前…」おおっと、いけない笑
「…坂口です。」
・・・・・
「おぉ〜来た来た。迷わなかった〜?」
案内されたのは個室。
私を見つけると手をパタパタ振る。
「…うん、大丈夫だった」
「そっか。なんか飲めよ」
そう言ってニコニコしながらメニューを差し出す彼の名前は、竹内涼真。長身のイケメンくん。
「あれ…なんかまた痩せた?」
「え…?」
急に涼真は私に問いかけた。
そう…かな?
答えに困っていると、
「うん、確かに最近痩せたね」
スマホをいじりながら、実はずっと涼真の隣に座っていた、"彼"がやっと口を開いた。
「…」
「あ、そうなの?」
彼の言葉に言葉を返したのは、私ではなく涼真。そしたら、うんと適当な返事をしてみせる彼。
「葵ちゃんはスタイルいいからね〜」
…
彼の名前は坂口健太郎。
大学のサークルで知り合った同級生。彼も長身のイケメンくん。
そして、
私と健太郎はセフレなんだ。
・・・・・
今年の春から大学生になった。
都会育ちだった私にとって、大学に入ったところで別に新鮮と感じたものはこれ一つなかった。
だけど高校の時の私とは、まるで生まれ変わったかのように、違う人間になっていた。
自分でも思う…。きっと高校時代の友人に街中で会っても気付かれない。…気付かれなくていい。高校時代の私として、人と会うのはもう嫌だから。
…
私は、ある日寝坊していつもは逃れるコトのできた満員電車に乗らざる得ない状況になってしまった。
人と密着する空間が、たまらなく嫌。臭いとか気になるし知らない人の背中とか、密着するが気持ち悪くて仕方ない。
(…最悪っ。)
そう心の中で呟いた…
声に漏らしていないハズなのに。ある男性によって私は救われた。
ある一人の男性がドア付近に私を押し、楽にしてくれた。…察してくれたのかな?私とその人は今壁ドン状態。
「…すみません。」
申し訳なくなりそう言った
すると
「謝ることじゃないよ…」
そう言って、その人はうつむいていた顔を上げた。
…
彼は塩顔でミステリアスな顔立ちをしていた。
それが、健太郎だった。
・・・・・・・
「…てか、なんだよ〜お前らの出会いって今の関係の割りにはちゃんとしてたんじゃん。笑」
涼真は、私と健太郎の関係を唯一知っている友人だ。
「困ってる子は放って置けない性格なんでね〜」
お酒によった健太郎は、顔を赤く染めていた。そして、テーブルに顔を沈めた。
…放って置けないって、
だから、あの夜、可哀想な私を?
まぁ、わかってるけどね。笑
「お前、こいつのどこが好きなわけよ。笑」
「…ちょっと、涼真」
セフレだよ…?
たかがセフレ。愛なんてない。
私の一方的な愛だけだから
そんな現実つきつけられるかもしれないのに、、私は涼真を軽く睨みつけた。
「…顔とスタイルと肌触り。見た目全部好き〜。」
「…」
好き…?
「ははは!w
肌触りってお前変態かよw」
「だって好きなんだもん」
「変態丸出しだわ。笑」
「だって好きなんだもん」
「何回好き好き言うんだよwなぁ?葵…って、なんか顔赤くね?」
「………え?///」
何回も好きとか言わないでよ…
でも、本当のところ嬉しかった。
・・・・・・
70億人の命がある中で
彼と出会ったコトは奇跡…
だけどそれは過ちだった。
出会ってはいけない 私達が
出会ってしまった時、、
きっと
周りを巻き込むほどの、
誰かを傷つけてしまうほどの、
過ちを犯してしまうんだろう
それが…今の現状。
・・・・・・
____
_______
______
「…んっ、」
カーテンの隙間から明るい光が射し込んだ。そのせいで目が覚める。
目を開けると、目の前には見慣れた景色。見慣れていてもやっぱり毎回見るだけで幸せな気持ちになる。
「…おはよ」
彼が目を覚まさないようにそっと呟いた。もちろん彼は目を覚まさない
「…朝ごはん作ろ。」
そう思い、床に置いてる衣類に手を伸ばす…
「…っ、!」
すると再び引き戻される身体。
引き戻したのは、彼の腕
そして、私を優しく抱きしめながら首に唇を当ててきた。
「…くすぐったいよ」
「…ん」
「寝ぼけてんの?」
「…」
「ねー服着るからぁ。」
「…」
「朝ご飯作るからぁ〜」
って、言うと離してくれた。
なんだ。お腹空いてんのね
彼の顔を見るとスヤスヤ眠っていた
私はようやく衣服を身につけると、キッチンへ向かった。
…私と彼は昨晩、涼真と居酒屋で別れた後、彼の「葵ちゃんの家行きたい」という一言から夜を一緒に過ごした。
なんでこんなことしてるんだろね
私には彼氏がいます。恋人です。
同じ大学の男性です。
一方、健太郎にも彼女がいます。
二年間付き合ってるそうです。
「朝ご飯出来たよ、健ちゃん。」
・・・・・・・・
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