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*6th*『報われない恋』
*
報われない恋とかさ…
片想いとかをさ…
美しいモノだと皆言うけれど
本当にそうなのかな…?
・・・・・・・
「葵ちゃんやっぱ可愛いね〜!」
「あー目が幸せですわ〜」
「生きてて良かった〜」
大学で男どもに囲まれる今現在。
あー…うるさ。
「ありがとうございます〜笑」
なんて、笑って見せると
「可愛い〜!!」
とか言って茶化してくる。
はぁ…世の中簡単。
すると、ある男子生徒がこう言った
「あれって将暉じゃねーか?」
…え?
「おーーい将暉〜!」
呼びかける男子生徒の視線を辿ると、菅田くんがいた。
「おー!どーした?」
私の姿が見えていないのか、菅田くんはいつも友達に見せる顔で近づいてきた。
「…」
私は菅田くんの彼女。
「おーい!お前の彼女ちゃん、メイド姿だぞぉ〜!笑」
「え?メイド?」
彼は、立ち止まった。
「学園祭の予行練習♩」
男子生徒がそう答えると菅田くんは言った。
「じゃあ、俺は本番まで楽しみにしとこーかな。」
「…」
その瞬間、「フ〜!」と騒ぎ出す周り。
こんな時、いつもなら照れる菅田くんなのに…この時はいつもになく冷静で微笑んでいるだけだった。
あれ…?
何だろ…。
菅田くんが菅田くんらしくない。
菅田くんなのに…
「照れてんな〜あいつw」
「彼女を目の前にデレデレか〜?」
いや…違う。
なんか様子がおかしい。
「愛されてるね〜葵ちゃん」
「…」
いつもの菅田くんなら"俺以外見たらダメ〜"って言う、絶対。今日の菅田くん、変だよ。
…なんで?
・・・・・・・・
*kentaro side
「健太郎〜」
「なーに?」
「最近、チョコレート食べんね。嫌いになったと?」
俺の隣に座っていた彼女が俺に寄りかかって甘い声で問いかける。
「嫌いにはなってないよ。」
「じゃあ虫歯とか…?笑」
「ううん」
「ほな、なんで?」
「今はあげたいって思っちゃうんだよね。チョコレートを」
「…へ?」
「…何言ってるんだろ、俺」
「あげたいと?チョコを」
「あ…まあ。笑」
我ながら馬鹿だと思ってるよ。
「でもチョコは全然好き…「前にね、」
「ん?」彼女が俺の言葉を遮る
「前にね、駅の売店で健太郎が好きなチョコレート買おうとしたの。」
「うん」
「残りひとつしかないチョコを取ろうとしたら、たまたまね、私と同じチョコを取ろうとしてた女の子がいたの。女子大生かな?」
「…うん」
葵ちゃんのことだ…。
「その子すぐ手引っ込めたんよ、せやから何か申し訳なくなって私が『このチョコレート、私の彼氏が好きでよく食べてたから買ってみようって思ったんです。』って言ってその子にチョコ渡したらね…」
彼女は微笑んでいった。
「その子ね……」
・・・・・・・・・
*aoi side
「はー…疲れた。」
やっと普段着を着れた。
疲れてしまったので私は自販機で大好きな紅茶を買ってほんの一息ついたいた。
でも…
こんなに賑やかなの初めてかもしれない。こんなに皆から注目されるの初めてかもしれない。
私…前と違う。
変われてる。
「…ははは。」
笑えてる…はずなのに、
何でだろう。涙が出てきた。
人には思い出したくないことの一つや二つある。
でも、それを思い出してしまった時、きっと泣いてしまうんだろう。
辛くて辛くて苦しくなるのだろう。
それでも誰にも言えないんだろうな…。
大丈夫…昔の私じゃないから。
そう思い立って私は、
ある人に連絡した。
"菅田くん、学園祭一緒に回ろう"
その時の私の手は、
不思議と震えていた。
・・・・・・・
菅田くんから連絡が来たのは次の日の朝だった。
"お〜ええで♩"
いつも通りの関西弁、語尾の「♩」。これが菅田くん。
昨日のは、私の気のせいだよね。
学園祭…明日だ。
その日は学校が休みだったから、家のことしたり手の凝った料理を作ってみたりした。そして、あっと会う間に夕方になってて、晩御飯の買い出しに行くことにした。
一人は心地よい。
てゆーか元々一人だったから。
私は一人、スパーマーケットにいた。野菜やらお肉やらお魚やら新鮮なものがたくさん帰るお気に入りのお店だ。
今日は何作ろうかな。そうだ、アリスとか愛も呼ぼうかな…。
なんて思ったけど、
「…菅田くん、呼ぼうかな」
脳裏に浮かんだ彼の顔。
呼んでも…いいかな?
迷ったが、呼ぶことにした。
昨日の彼の対応が少し頭の中でモヤモヤしていた。
それに、今日はなんとなく二人でいたい。
そして私は菅田くんに電話をかけていた。
trrr…≪もしもしー?≫
すぐさま出てくれる彼。
「あ、菅田くんあのさ…」
"今日うちに来ない?"
そう言おうとした時だった。
「……え?」
目を疑った。
≪ん…?葵?≫
あれ…って、
「健太郎〜最近カレーばっか食べたい言いおる〜。笑」
「だって充希ちゃんの美味しいじゃん。笑」
「はっはは。じゃあ今日も頑張って作っちゃおうかなぁ〜??」
健太郎くんと彼女さん…
密着しながら歩く二人は
私の心をどんどん黒くした。
「あ、健太郎。」
「ん?」
そう言って彼の頭を触るあの子
「ごーみ。ついてるよ」
…ははは、馬鹿みたい。
何なの…よ。
黒く、濁って…
≪なあ、葵!どないしたん?≫
「菅田くん……
…今夜うちに来てくれないかな?」
・・・・・・・・・
「んっ…ん…っ、あぁ、…はぁはぁ…あっ…」
夜中に鳴り響く喘ぎ声。
真っ暗な部屋から差し込む月の光。
彼はボサボサになった髪の毛をかきあげながら、私の身体に何度も何度もキスをする。
そして、「好きだよ…」って言う。
私にとってこの言葉はどんな言葉にも変えられないくらい嬉しい言葉。
私を抱きしめる彼の腕は、たくましくて柔らかかった。いつまでもこの腕に抱きしめられていたい。
「好きだよ、愛してるよ葵…」
ごめんね…本当にごめん。
こんな私を許して…。
健太郎くんが彼女と歩いてたからって嫉妬して、その淋しさを菅田くんに埋めてもらうなんて、クズ以外の何者でもないことを、私は強く実感していた。
自分が憎くて仕方ない。
"片想い"には人それぞれに意味がある思う。美しいとか儚いとか楽しいとか。
私なりの"片想い"があるならば、
それはきっと…『偽り』なんです。
・・・・・・・
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