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*7th*『学園祭』
・・・・・・・
*
とうとう学園祭の日になった。
私は嫌々な表情でメイド服を着て立っている。接客する気にもならん。
「可愛いな、あの子」
「声かけてみようかな〜」
近くの男性二人が私に駆け寄ろうとした、その時だった。
「葵〜俺休憩貰ったから行こうぜ。」
「菅田くん…」
菅田くんが来た。
まるで男性二人と私の間に入るように。
「なんだよ〜彼氏持ちかよ」
そう言うと男性二人は帰って行った。
「葵…?行こ?」
「うん」
彼が私に差し出し手を、私は強く握りしめた。
「てゆか…可愛い//」
「え?」
「メイド…///」
真っ赤な顔を隠しながら菅田くんは、私の手を引いて歩いていった。
そんな時だった…。
「…あ」
「え…」
「何?知り合い?」
それはまるで
砂時計が止まったようだった。
運命って、どうしてこんなにも残酷なの?
私たちの目の前に現れたのは
あの子と…健太郎くんだった。
「…あ、駅の売店の人だ。」
私は身震いした。
そう口を開いたのがあの子だったから。
「なに?葵の知り合いなの?」
「う、うん…」
菅田くんの言葉に
半信半疑で私は応えた。
健太郎くんはというと…
「健ちゃんこの前話してた子やで。」
「…うん」
私みたいに
あの子の言葉に応えるだけだった。
「この前はどーも。」
その子は私に近付いて微笑んだ
「やっぱり前の子や〜。可愛いから印象に残ってたんですよ。笑」
「あ…そうなんだ。」
比べて私は愛想笑いを浮かべる。
艶のある髪、綺麗に仕上げたメイク、お洒落な服、ブランド物のバッグ。
そんな彼女は…
「私、高畑充希です。」
そう名乗った。
「高畑…さん」
「あー充希でええよ笑」
愛想を振りまく彼女に、
私は劣等感を感じてしまった。
「充希、そろそろ行こっか」
健太郎くんが口にした。
私と健太郎くん…二人凍りついていた。それなのにも関わらず、
「あ、一緒に行動しません?」
「…え?」
とどめを刺すかのようにあの子はそう言った。
・・・・・・・
「とりあえず、コーヒー4つお願いしま〜す。」
慣れたように高畑さんはコーヒーを頼んだ。
私の中で重い空気が流れる。
「それにしても、学園祭って久々に来たな〜。なんか楽しいですよね、学校行事って。笑」
「そうですね。笑笑」
私の代わりに菅田くんが返事した
きっと私が人見知りなのを知っているからだ。
「今日だけと言わずにまた来たいな〜こーゆーイベント。ま、今度来るのは子供の学校行事とかかな〜?ねー?健太郎。」
……チクッ
「あ、そうだね。笑」
私は今分かった。
健太郎くんは、今、
二つの恋を歩いている。
一つは、未来がある充希さんとの恋
そして、もう一つは、
未来がない今だけの私との恋
「…っ」
なんで…っ
なんで、片想いって…
ちっとも心を満たしてくれないの?
「ん?あれ?どこか体調悪い?」
充希さんは私の様子を伺った。
「いや…そのっ、私、ちょっとお手洗いに行って来ます。」
その時だった。
「葵ちゃん危ないっ!!」
「え?」
そう声が聞こえた時、
私の目の前で観葉植物が倒れた。
私は危機一髪怪我をしなかった。
「ごめん…!」
振り向くと…そこには、
「…」
…健太郎くんがいた。
「…あ、ありがと」
それと同時に私達はあることを忘れていた。
「葵…ちゃん?
なんで健太郎、この子の名前知っとると?まだ聞いてないのに。」
あの子の前では偽らなければならないということを。
・・・・・・・・・
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