*7th*『学園祭』

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・・・・・・・・・ 「… なんで健太郎、この子の名前知っとると?まだ聞いてないのに。」 やってしまった…。 どうしよう。 菅田くんにもばれちゃったかも。 どうしよう…私達… 「あ、充希に言ってなかったけど、この子俺知ってるんだ。」 そう口を開いたのは健太郎くん 呆然としている私の隣で 彼は淡々と話した。 「そうなの?葵。」 菅田くんが私に問う。 「うん…知り合いなの。私の友達の友達だったの。」 「なら、早く言ってくれれば良かったのに。笑」 菅田くんが無邪気に笑うと 「いやー葵ちゃん俺のこと覚えてるか心配だったから。笑」 健太郎くんはまた淡々と嘘をついた。 …ねえ、健太郎くん 何で助けてくれたくせに、 嘘をついたの? それって、どうしても充希さんと別れたくないってコトじゃん。未来があるってコトじゃん。 どうして… 一瞬でも期待させたくせに、 また私を裏切るの? 大っ嫌いだよ…。 「あ、葵…俺もうすぐ係り交代しなくちゃ行けない時間だった。行かなきゃだわ。」 「あ…分かった。」 「お。そうだ!俺、クレープ屋の出店やってるんで、是非お二人さん達も来てください!」 そう言って菅田くんは、 クレープ屋のチラシを二人に渡した。 "じゃ、また連絡するな" そう言って彼はカフェを後にした すると、 「あ…そういえば、私もこれから仕事が入ってたんだった。」 「え、そうなの?」 充希さんが立ち上がった。 そして帰る支度を始めた。 「今日は再会できて嬉しかった。また会おうね、葵ちゃん。」 そう言って私に笑いかけた 「あ、じゃあ俺送るよ!」 「大丈夫。タクシー呼んであるから。…二人ごゆっくり。」 … 寒気がした。 …… あの子がいなくなり、 私達は"やっと"二人きりになれた。 「…ねぇ、健太郎くん」 「ん?」 「何でさっき名前呼んだりしたの…」 「それは……葵ちゃんが危なかったから。」 「それは理由にならないよ」 「なんで…?」 「セフレは彼女じゃないんだよ?なのに何で急に心配したりするの?あなたの彼女はあの子。私の彼氏はあの人なの。わかるでしょ?健太郎くんは私が怪我したってたいしたことないじゃん。」 「馬鹿かよ…あるよ。」 「……そーゆーのやめてよ。」 「何?そーゆーのって。」 「私との関係なんて"今だけ"って思ってるんでしょ…?」 「…」 「ムカつく…」 私は、カフェを後にした。 何で黙ってんのさ。 いーよ、別に。 どうせ最初から一人だもん。 一人の方が心地いいもん。 健太郎くんがいなくたってさ… 私には…っ 私には…!! どうしよう 「…健太郎くんしかいない。」 ・・・・・・ ・・・・・・ 花火が夜空に上がる頃、 私は空き教室にいた。 一人でここで泣いてたらいつの間にか寝てて、そして目を覚ました今も所詮一人…。 外では皆が楽しそうに賑わっている 「花火ってこんなに儚いものだったかな…」 一度は光を放つも、 一瞬で 光は消え なくなってしまう 花火って…儚いな。 私と健太郎くんの関係も きっと、花火に重ねられるのかな? 私は最低なクズ…。 「はあ…帰ろっかな。」 そう言って立ち上がった時だった。 ガラガラ… 「…え?」 ドアが開いたかと思うと、 そこにはライオンが立っていた。 ライオンと言っても着ぐるみの。 「誰…?」 私は恐る恐る近づいた。 そのライオンは、 背が高くって私よりもあまりにも頭の高さが違っていた。 「ねえ、頭外していい?」 するとライオンは頷いた。 「あ…あの、ちょっと座って。」 そう言うと、 ライオンは座った。 着替えに来た生徒だろうか。 それなら手伝ってあげようかな。 そう思いながら私はライオンの頭を外した。 「えっ…健太郎くん?」 ライオンの正体は健太郎くんだった 「何してんの…」 「ライオンしてた。」 「は?」 「なんか女の子たちに声かけられてボランティアで着ぐるみ着るコトになった。」 「…またモテてたんだね。」 「うん。」 「ドヤ顔すんな。笑」 暗い部屋にいるのに… 私は、あなたさえいればいいと思った。 どんなに美しい花火でも あなたには敵わないよ…って。 「何で泣いてんのさ笑」 「健太郎くんのせいだよ…」 「ごめん…」 「いっつも見透かしてさ、本当ムカつく…」 「ごめん…」 「あの子のこと好きなくせに私に優しくすんなよ…。どうせ私なんかすぐ捨てるくせに…私はっ、健太郎くんと一緒にいたいだけなのに…」 ギュ… その瞬間抱きしめられた温もりは、私を馬鹿にして幸せにさせた。 「葵ちゃんはさ、嬉しい時に嬉しいって顔するんだよ。悲しい時に悲しいって顔するんだよ。」 「え…」 「そんな人、俺の前では葵ちゃんしかいないんだよ…。」 「でも…私は嘘つきだよ?」 「違うよ…? 嘘つきにさせてるのは俺だよ? 君に嘘ばっかつかせてるのは俺だから。」 「…っ」 「ごめんね…葵ちゃん。」 「私は、…健太郎の優しいとこが好き。初めて会った時もそうだった。優しい健太郎に惹かれてった。会わない時間の方が人を好きにさせるって本当だね…健太郎に会わないと私、健太郎のことばっかり考えちゃうんだよ…胸が苦しくなるんだよぉ…。」 「…」 「なんで…泣いてるん?笑」 「泣いてません〜笑」 「泣いてるやん!笑」 「葵ちゃん…」「ん?」 「あのさ…お互い、ちゃんと付き合おう?」 「え…」 「偽りとかなしに俺は君を大切にしたい。だからさ…お互いの恋人にちゃんと別れを告げよう?」 「うん…」 嬉しかった。 どんな言葉よりも。 未来は…あったんだね。 「これだけは言わせて… 葵ちゃんを好きなのは俺です。」 「へ…」 「ん?笑」 「初めて聞いたんだけど。」 「うん。初めて言った。」 「ねえ、健太郎…」 「キスしていい?」 「え?」 私の答えも聞かずに、 彼は私にキスをした。 ・・・・・・・ trr… ≪只今、電話に出れません。≫ 「…はあ、どこ行ったんだろ。」 その時、 私は菅田くんの電話に 気付かなかった。 ・・・・・・・・ b0519ae2-ad1a-428b-8dde-e4665de5f9a5
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