叫べ!

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「お早うございます。」 「お早う。」 揃って台所に顔を出した。 泣き腫らした目の恵人を見て、母さんは笑いを堪えながら、濡れタオルに氷を挟んで渡した。 「また…随分と…。 本当に…素直というか…隠し事は出来ないタイプね。」 母さんの声に反応して、親父は新聞から視線を上げ、すぐにまた新聞に視線を戻した。 「お父さん、後で少し話がしたいんですけど、時間大丈夫ですか?」 「ああ、そうだな…。 朝食の後で良いか?」 「はい。」「ああ。」 いよいよだ。ずっと、ずっと望んでいた恵人との暮らしが、目の前にある。 興奮が抑えきれない、顔が緩んで仕方ない。 抱き付いて、キスがしたい…。 思わず熱い視線を恵人に向けて、ハッとした。 ここは、実家だ…。
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