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少し歩くと、親父が向かっている場所がわかってきた。
階段の下に立って、三人で上を見上げた。
並んで階段を登りながら、親父はぽつりぽつりと話し始めた。
「岳史、仕事はどうなんだ?勤めて…何年経った?
…早いもんだな。俺も年取るわけだな…。」
階段を登りきって、開けた広場に置かれたベンチに並んで座った。
「もう、隠す事でもないから言ってしまおうと思ってな。
母さんと結婚する前…、俺が見合いの席から連れて来たのは知ってるよな。
母さんの親に許してもらうまで、恵人君と似たような事をしててな…。俺の場合は、何度も足を運んでひたすら頭を下げただけなんだが…。」
親父は空を仰ぐように見上げながら、少しだけ笑っているように見えた。
「この一年くらい、試されてるようだった。
母さんは、お前達が初めて家に来た時、楽しそうに言ってたよ。昔を思い出すって。
俺はな…、無理だった。常識から離れられなくて、お前達を見ることも出来なかったよ。
認めないと言えば、岳史は諦めると思っていたし、そうでなけりゃ困ると思ってな。
あれは…坂巻の家にも迷惑をかけたし、やりすぎだったよ。悪かったな。」
親父の口から謝罪の言葉が出るなんて、思ってもいなかった。
口を挟む事もせず、俺達は親父の話を聞いていた。
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