叫べ!

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「元々、お前が所帯を持ったら譲るつもりだったんだ。 そのままそこに住んでもいいし、売ったって貸したっていいさ。 ただ、不動産を所有する事になるからな、税金はかかってくるぞ。 それで良いなら、もらってくれ。 あぁ…話があるって言ってたな。何だ。」 親父は思い出したように「俺ばっかり話してて悪かったな。」と笑って言った。 俺も恵人も言おうとしていた事は解決してしまったから、笑うしかなかった。 「お父さん、俺達、一緒に暮らしたいから、マンションを出ますって言おうと思ってたんです。」 「親父、なんかさ、何だろう…。 ありがと…。」 気持ちが昂っていてうまく言葉に出来ない。 恵人と暮らすのを許してくれた事も、また実家に顔を出して良くなった事も、姉ちゃんの子供に会える事も、全てに感謝している。 「マンションの事、ありがとう。 どうするか、もう少し相談して決めるよ。」 親父が母さんにプロポーズした、恵人が初めて実家に泊まった夏、母さんと三人で花火を見た、俺を置いてきぼりにした恵人を探して、ここに来た。 その場所で、「馬鹿者、許さん」と言い続けた親父の許しを二人で聞く事ができた。 家族に打ち明けてから一年半と少し、付き合い始めて三年目の秋の出来事だ。
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