422人が本棚に入れています
本棚に追加
激流に流されるものの、もう生きたいとは思わない為、
無駄な抵抗はせず、ただ身を任せる。
皮肉なもので、体が自然に浮いて水面に顔が出せてしまう。
…いいや。そのうち渦に巻き込まれて沈むだろう…
そう思った時、あり得ない事に流されている水底から、
丸太のように折れた木が浮かび上がり、
私の体を乗せるようにして浮かんだ。
小1の私にだって分かる。それは物理的に、あり得ない現象だ。
それは激流に乗って突き進む。
そこから降りようとしたら、衣服が絡んでそれも出来ない。
そうこうする内に、目前に橋が迫った。
このまま流されたら、柱に激突して投げ出されて溺死だ。
それか、水嵩が増した為に、橋の下を上手く潜れずに
頭部激突で死ぬか…。出来れば後者は避けたい。
私は木に自分を委ねた。
いわばこの木は、死出の旅への水先案内となる。
橋が近づいた。
その時、橋の柱に溜まったゴミの山の中に、
槍みたいに鋭利に尖った木の棒が
突き出しているのを見つけた。
私はふと、あの棒に心臓を突きさせば確実に楽に逝けるのではないか?
このまま行けば、柱に溜まったゴミの山に激突する。
投げ出されて溺死よりは、確実に、しかも綺麗に逝ける。
そう思った。
このスピードで行けば、確実に刺さりそうだ。
私は体を起こし、タイミングを見計らった。
少し左よりの胸の部分に突き刺さるように…
木は流れに乗って、勢いを増す。
まるでジェットコースター並みだ。
ゴミの山に激突…の瞬間、
私は勢いに乗って木の棒に向かって飛んだ。
確実に、心臓が突き刺さるように…。
ガシャーン、バリバリバリ
木はゴミの山にぶつかり、流れて行ったようだ。
「ガハッ」
胸に突き刺さると同時に、口から血が溢れる。
想像を絶する痛みと、
呼吸が出来なくなる苦しみを同時に味わった。
「ゲホッガハッガハッ」
激痛で呼吸が出来ないのに、咳が容赦無く襲い、
肺の奥から絞り出されるように鉄臭く生暖かい液体が絞り出される。
口から血が溢れ、ポタポタとゴミの山に滴り落ちた。
激痛と、血で窒息していく。
徐々に、意識が薄れる。
…琴姉、ごめんね。約束、守れなくて。
でも、命を懸けてまで、守る価値、私には無かった…のに。
買いかぶり過ぎ…だよ…
…でも、これで…パパとママに、皆に…責められなくて、済む…
琴姉、私も一緒に、天国、いける…か…な…
そして意識を手放した。
最初のコメントを投稿しよう!