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仄暗い中を、あてもなく彷徨っている。
ここは、どこだろう?
暗灰色。
まさにこの色の中を歩いている感じだ。
そして私は、何故ここにいるのか?
全く思い出せない。
周りには、白装束を着たお婆さんやお爺さん、
振袖姿のお姉さん、制服姿の男子学生、
ウェディングドレス姿の女の人、
パジャマ姿の主婦、制服姿の男性などが、
ゾロゾロとただ只管、
一定方向に向かって黙々と歩いている。
皆、服装はバラバラなのに、
一様に無表情でまるで能面みたいだ。
そして誰も一言も発しない。
私も列に紛れて歩く。
しばらく歩くと、前方に鈍い光が見えてきた。
そして徐々に1列に並び始める。
何かの順番待ちのようだ。
待ちながら、何故自分がここにいるのか?
思い出そうと試みた。
今着ている服は、デニムパンツに白Tシャツ。
黒いスニーカーだ。
確か、夏休みで。
家族で母方の祖母宅に来て、そして…そして…。
何故か理由はわからないが、激怒する母親、
飛び出す私、雨の中…。
断片的に、記憶が甦っていく。
溺れる私、そして…川底に沈んで行く…
琴姉!!!
突然、全てを思い出した。
確か木の杭みたいな尖った棒に、
胸を突き刺した筈。血が口から溢れて…。
思わず、胸を確認してしまう。
でも、血も何もついていない。
…これが、いわゆる死出の旅、
というやつなのだろうか?
琴姉はどこだろう?
そうこうするうちに、光の向こうに近づいてきた。
光が少し眩しくて、思わず目を細める。
そこは、一面灰色の世界。
ゴロゴロ、ゴツゴツした石の河原。
右から左へ流れる大きな灰色の川。
流れはさほど激しくなく、
皆、列を作ったまま川に入っていく。
どうやら向こう岸に渡るようだ。
向こう岸には、
赤や青、白やピンク、黄色等
色とりどりの沢山の種類の花が咲き乱れている。
黄色や白の蝶々が舞っている。
こちらから川までは灰色。
あちら側の川岸からは鮮やかな色彩の世界。
そうなっているようだ。。
私も前に続いて、川に足を踏み入れた。
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