422人が本棚に入れています
本棚に追加
姉は超がつくほど可愛かった。
今でも、目を閉じても鮮明に思い出せる。
真っ白な肌はキメ細かくて、
マシュマロみたいにふわふわで美味しそう。
艶々した茶色い髪は、見事なストレートで腰の下迄伸ばされている。
上品な三日月眉は勿論天然ものだ。
高くて上品な鼻、小さな野イチゴみたいな赤い唇。
長い長い茶色の睫毛は、大きな目をバッチリと取り囲んで。
その瞳はどこまでも澄みきった明るい茶色だった。
まるでお星様みたいにキラキラしていて、宝石みたいだった。
小柄で華奢な体付き。
昔の少女漫画に出てきそうな女の子だった。
勉強も、スポーツも、絵も、作文も、歌も、何をやらせてもトップ。
天は二物も三物も四物の与え給うた訳だ。
三年ほど後から生まれた私は、
文字通り何の取り柄も無く、つまらない子だった。
姉の数ある才能の内の一つだけでも、私に与えてくれたら良かったのに。
せめて、もっと容姿を何とか出来なかったのだろうか?神よ。
両親は、あまりに優秀過ぎる姉。
あまりに平凡過ぎる私に、どう接して良いか戸惑っていたようだ。
出来るだけ、公平に。決して比べないように。
私には私にしかない美点を見つけて、そこを伸ばしてやろう!
これで僻んで卑屈に育ったら、目も当てられない程屑人間になってしまう。
私達の恥だ。と言う事だ。
僻み根性丸出しの思い込み話ではない。
実際、両親達が話し合いしているのをこの耳で聞いたのだから。
更には、周りが私の事を何て噂してるかも知っている。
「お姉さんばかり良い部分を貰ったせいか、
妹は『カス』で出来ている。気の毒に」
だそうだ。
大人が子供の前で話すから、子供も真似して話す訳だ。
だけど妹だから。いつか私も姉に似てくるのではないか?
そう期待していた。
だけど現実は厳しかった。
そんなのはファンタジーのお話の世界だ。
最初は悲しかったし、神を恨んだりしてみた。
だけど、そんな事しても現実はちっとも変わらない。
それに私は、姉が大好きだった。
だからこう思う事にした。
「私はきっと、優秀なる姉を更に引き立てる為に生まれて来たのだ!」
と。
不思議なもので、それが自分の「使命」だと思い込むと、
誰に何を言われてもさほど気にならなくなるらしい。
最初のコメントを投稿しよう!