第壱部 「幼少から思春期編」 第一話 原罪

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姉は超がつくほど可愛かった。 今でも、目を閉じても鮮明に思い出せる。 真っ白な肌はキメ細かくて、 マシュマロみたいにふわふわで美味しそう。 艶々した茶色い髪は、見事なストレートで腰の下迄伸ばされている。 上品な三日月眉は勿論天然ものだ。 高くて上品な鼻、小さな野イチゴみたいな赤い唇。 長い長い茶色の睫毛は、大きな目をバッチリと取り囲んで。 その瞳はどこまでも澄みきった明るい茶色だった。 まるでお星様みたいにキラキラしていて、宝石みたいだった。 小柄で華奢な体付き。 昔の少女漫画に出てきそうな女の子だった。 勉強も、スポーツも、絵も、作文も、歌も、何をやらせてもトップ。 天は二物も三物も四物の与え給うた訳だ。 三年ほど後から生まれた私は、 文字通り何の取り柄も無く、つまらない子だった。 姉の数ある才能の内の一つだけでも、私に与えてくれたら良かったのに。 せめて、もっと容姿を何とか出来なかったのだろうか?神よ。 両親は、あまりに優秀過ぎる姉。 あまりに平凡過ぎる私に、どう接して良いか戸惑っていたようだ。 出来るだけ、公平に。決して比べないように。 私には私にしかない美点を見つけて、そこを伸ばしてやろう! これで僻んで卑屈に育ったら、目も当てられない程屑人間になってしまう。 私達の恥だ。と言う事だ。 僻み根性丸出しの思い込み話ではない。 実際、両親達が話し合いしているのをこの耳で聞いたのだから。 更には、周りが私の事を何て噂してるかも知っている。 「お姉さんばかり良い部分を貰ったせいか、 妹は『カス』で出来ている。気の毒に」 だそうだ。 大人が子供の前で話すから、子供も真似して話す訳だ。 だけど妹だから。いつか私も姉に似てくるのではないか? そう期待していた。 だけど現実は厳しかった。 そんなのはファンタジーのお話の世界だ。 最初は悲しかったし、神を恨んだりしてみた。 だけど、そんな事しても現実はちっとも変わらない。 それに私は、姉が大好きだった。 だからこう思う事にした。 「私はきっと、優秀なる姉を更に引き立てる為に生まれて来たのだ!」 と。 不思議なもので、それが自分の「使命」だと思い込むと、 誰に何を言われてもさほど気にならなくなるらしい。
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