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いつも遊ぶ原っぱが、土手の部分が
沼みたいに水が溜まっている。
水中草…て感じで、
草が水の中で流れに身を任せている。
だけど、お水は泥を含んで濁っている。
川はザーザー音を立てて、
今にも土手の上に溢れて来そうだ。
手すりに縋りつきながら、
ゆっくりと階段を降りて行った。
いつもの原っぱに行く前に、
流れに足を取られて流されそうだ。
…やっぱり、水死は死ぬまでの間、
苦しいんだろうか…
風邪薬とか一瓶、料理酒と飲んで…
眠くなったら飛び込むとかすれば良かった。
私は意気地無しだ。
いざ、死ぬとなるとこんなに怖い。
だけど、このまま生き続けても…
誰かに愛して貰えたり、
必要として貰えるようになれそうに無い。
…ザーザーザーザー…
…こっちへおいでよ、楽しいよ…
不意に、川が呼んでいる気がした。
吸い込まれるように、足を…
ズルッ!ザザッバチャン!
足を滑らせてそのまま川へ転落してしまった。
服が水を吸い込み、服が体を締め付ける。
川は足がつかない!
犬かきをしようにも、
沈みながら流れに翻弄されるしかなかった。
もう、何が何だか分からない。
水が鼻に、口に入り込み、
もはや水面に顔を上げる力も無い。
けれども、想像以上に苦しくて
足がつかず、ただ流され、
服が絡みついて体の自由がきかぬまま、
沈む恐怖。
現れたのは、「生」への執着。
何とか呼吸を確保しようと足掻くのだ。
けれども、足掻けば足掻くほど、
水を吸い込み、
飲み込んだ気管はたはだ異物を吐き出そうと
咳込み、咳込んでは水を飲み…
の終わりなき地獄の苦しみだった。
…もう、疲れた。楽になりたい…
そう感じた瞬間、抵抗を辞めた。
すると、体が浮いたのだ。
自然に顔が水面に出せる。
その時!
水面に水平になるように私の顎を持つ手を
感じた!
「生きるの!何があっても!!
力を抜いて。私に任せて!!」
琴姉だった。
琴姉が、私の顎を支え、
背泳ぎみたいになるように誘導し、
目前に迫る川の中州…まだ辛うじて陸がある…
を目指してもの凄い勢いで泳いでいた。
声を出す事が憚れる程に、鬼気迫る勢いだった。
川の中州の部分は、水は二手に分かれる為
流れが複雑極まりない。
水嵩が増し、流れも急な今は
そこは泡を立てて激しい轟音と共に、
渦を巻いていた。
私は仰向けで頭上の光景を感じとる形になるが、
轟音と水飛沫、激しいながれで
見るまでもなく渦の恐ろしさは伝わった。
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