【1】 超進学校生徒の悩み

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【1】 超進学校生徒の悩み

「よし、後ろから答案用紙を集めろ」  教師の声を合図に、クラス全体が一斉にため息をもらす。  今日でテスト最終日。そして、今のが最後のテストだ。 「終わったー!!」  縮こまっていた腕を伸ばし、久しぶりの開放感に酔いしれる。 「クラス委員は前に出てきて名前確認。おい、浅岡(あさおか)!」 「あ、はい」  慌てて返事をして席を立ち、前に出る。 「最後だからって気を抜くなよ」  前に出てきたとたん、厳しい一言。言ったのは、もう一人のクラス委員・根岸(ねぎし)裕哉(ゆうや)。  勉強にスポーツ、も一つオマケに先生方のご機嫌取りまで、何でも軽々とこなす賢いクラスメートだ。 「先生、終わりました」  冷ややかな声が報告をして、テスト用紙を教師に渡す。 「しっかりしろよ」  そんな一言を残し、席へ戻っていく。  励ましともとれるが、明らかに非難の言葉。相変わらずきっつい奴。 「えーっと…はい、先生。俺の所も大丈夫です」  教師は俺の渡したテスト用紙をパラパラとめくると、既に席に戻っていた根岸に号令をうながした。 「起立」 ガタガタッ 「礼」 「終わったー!!」  最初の一人の声を合図に、雄叫びにも似た歓声が沸き上がる。そんな様子を見ながら、思わず「ガキ」と呟く。  まぁ、この素直さもこいつらも良いところだけどな。
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