個別指導は大変だ その弐

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 直樹は普通に喜んだが、ヘヴィーは妙にヘコヘコしてオレに媚を売っているように見えた。オレがひと睨みするとやはり大汗をかき出した。眷属イジメはこれくらいにして、直樹の技を見ることにした。    直樹の表情は真剣だ。イメージが沸きにくいのか考え込んでしまったようだが、眼を見開き的に向かって右手を伸ばし、「ハッ!」と短く気合を入れた。    その気合の成果なのか、『ドォ―――ンッ!!』と凄まじい音と共に土くれが勢い良く飛び出した。だが空気抵抗に負けて的まで届かなかった。直樹はオレを見て泣きそうな顔を見せ、大喜びを始めたのだ。そしてヘヴィーと共に踊り始めた。    今は喜ばせてやろうと思い、オレは観戦することにした。凄まじい音だったのでみんなが集まり始めたが、オレは両掌をみんなに向けた。ひとりを除いて納得して自分の訓練に戻った。 「ツヨちゃんがね、喜んでたわ。仲間ができたってっ!」  悦子は邪魔をしにきたわけではなかったようだ。ツヨシはいつものようにピンク色のウサギのぬいぐるみになって悦子の肩の上で大汗をかいている。 「そうか、それは何よりだったな。エッちゃんも時には直樹とヘヴィーの様子を見てやってくれ。土魔法の先輩としてな」  オレはツヨシの頭を撫でると、さらに汗をかき始めたのですぐに手を引っ込めた。直樹がオレを見ている。もう喜ぶのは終ったようだ。     
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