月光 参

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「じゃあ、私ここで降りるから、今日はありがとう、またね!」 「なぎさ、明日の花火大会、覚えてるか?」 「もう、それさっきなっちゃんにも言われたし、この前心晴にも言われたよ~」 「あはは、おまえ、ステータス欄に忘れっぽいって書いてあるんだろ」 「そんなことありません。そもそもステータス欄ってなに?」  私の反論に、燈也君はおかしそうに笑った。もう、からかわないで! まったく、どうして私はみんなからそのような扱いを受けているのか……模試以外に身に覚えはないんだけどなぁ。 「まぁ、気を付けて帰れよ、送っていくか?」 「大丈夫、ありがとう、また明日!」  そう、手を振って電車を降りる。燈也君は片手を挙げて応えてくれてから、走っていく電車と共に薄暗い夜の中に紛れてしまって――私は、電車の灯す明りがすっかり見えなくなるまで電停で電車を見送っていた。  明日の花火大会、楽しみだな……何を着ていくか、これから悩まなくっちゃ!
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