月光 参

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「遅くなってごめーん!」  息を切らしながら宮島港に行くと、すでに四人は来ていた。ひらひらと風に揺れる心晴のスカート姿が可愛らしい。なっちゃんのオフショルのTシャツとショートパンツも素敵だ。健ちゃんもハーフパンツとポロシャツを着こなしていてすごくオシャレに見える。  でも、なにより目を引くのはやはり燈也君――私、そんなに素敵にカーゴパンツを穿きこなせる人なんて知りませんけど……やっぱり足が長いからかなぁ。  そんななかで自分の格好だけがあまりに普段着過ぎて悲しくなってくる。 「もう、なぎさ、遅いよー!」 「ごめんごめん、途中でサンダルが壊れちゃって、スニーカーに履き替えてきた。そしたら服が気になっちゃって、総着替え」 「うわ、災難」 「でもその格好も可愛いよ~」  心晴が気の毒そうな顔をしてくれて、なっちゃんは私の無難な格好を誉めてくれた。優しすぎる。 「ほら、なぎさ来たから船乗ろうぜ!」  健ちゃんに促されて乗船。これから短い航海の始まり! 少しずつ大きくなってくる鳥居の姿は何度見ても荘厳で美しい――  平清盛が建てたと言われている海に浮かぶ美しい朱塗りの神社に息を呑む。 「あー宮島とか、ガキんとき以来だ。健太郎とも一緒に行ったな、あれは遠足か?」 「そうそう、遠足! 鹿にパンフレット食われてさぁ」  楽しそうに昔話をする健ちゃんと燈也君、二人はいったい、どんな子供だったんだろう?
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