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神社の中に入って、朱塗りの社殿の中を歩いていく。神社の中から見る鳥居も最高に荘厳。健ちゃんの話によると、もともとはこんな朱色じゃなくて、木の色そのままの社殿だったみたいだけど――見慣れてるからかな? やっぱり朱色がいい。
「ここに祀られている神様って女の神様なんでしょう? 三姉妹」
「そうなの?」
「そうそう、だからカップルでお参りに来ると嫉妬されて別れさせられちゃうんだって」
「なにそれ! 人間臭すぎる」
「あはは、でしょう?」
「でも結婚式には人気の場所だよねぇ」
ここで白無垢を着た綺麗な花嫁さんを何度も見たことがある。幸せそうに微笑む姿――女子なら一度はあこがれるよね?
「私、結婚式はここがいいなぁ」
「気が早いなぁ先に相手を見つけろよ」
「ひどい健ちゃん!」
うっとりとした様子のなっちゃんに水を差すのは健ちゃんだ。なっちゃんも心晴も可愛らしい花嫁さんになるんだろうなぁ。どんな人と結婚しちゃうんだろう。
私は――
なんて考えるとなんだか恥ずかしくなってきて顔が熱くなった。ダメダメ、想像できない。
「おいなぎさ、大丈夫か? 顔が赤いぞ、花火が始める前に熱中症とかになんなよ」
ちょっと、こんなところばっかり目ざとく見つけないでよ――! なんて内心悪態をつく。
「大丈夫大丈夫」
なんて返すと、燈也君は頬に冷たいペットボトルを押し付けてきた。急に襲ってきた冷たさに私はびっくりして声を上げる。
「きゃぁっ!」
「あはは、おっかしー」
「もう!」
私は頬を膨らませるけれど、燈也君はお腹を抱えて笑うばかりだ、意地悪――。でもその顔、どきっとしちゃうよ。
「もう、なぎさー先に行っちゃうよー!」
前から人波に飲まれて姿の見えない心晴の声がしたので、私と燈也君は慌てて人をかき分けて前に進む。
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