月光 伍

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 パルコの裏にあるアリスガーデンでトナカイパンを食べてから、ボーリング場へ向かう。アーケードから少し電車道路側に入ると、ボーリング場のあるゲームセンターがあるのだ。  一階にはたくさんのUFOキャッチャー台があって、カップルとか友達どうして賑わっている。あ、あのウサギのキーホルダー可愛い……なんて余所見をしてると、心晴に肩を叩かれた。 「受付何階だっけ?」 「階段で行こうぜ、競争な~」 「それ、健ちゃんと燈也君がめっちゃ有利じゃん!」  みんなで階段を駆け上る。これ、楽しいけどすごくしんどい……上り終わった後で、心晴先生からお小言があった。 「階段駆け上るのめっちゃ危ない! 転んだら命に関わるよ!」  本当に。もうやりません、今度からはゆっくり上ろう。ボーリング場はちょっと混んでいたけど順番はすぐにやってきた。 「そういえば、私ボーリングやったことない」  ということを今思い出しました。投げ方とか、全然わからない…… 「うっそ、そうなの? 家族とかで来ないかぁ、なぎさんち忙しいもんね……」  心晴は自分のボールを早速選んで戻って来た。赤い色の重そうなボールを抱えている。 「一緒にボール選ぶよ。私とおんなじの持てそう?」  心晴の赤いボールを持ってみる。うん、持てそう。重いけど、持てる。 「ここの三つの穴に指を入れるの。えっと、ここが親指で、中指と薬指だっけ?」 「なんで疑問形なんだよ心晴」  健ちゃんが笑いながらボールを持って、持ち方を教えてくれる。健ちゃんのボール、青くて色からして重そう……足の上に落としたらひとたまりもなさそうだ。 「お手本見せるよ。ちょっと投げてくる」  画面には上から出席番号順で名前が映し出されていた。健ちゃんは自分のボールを持って助走をつける。投げたボールはすごい速さでレーンの向こうのピンに吸い込まれて行って、小気味良い音と共に全部のピンが倒れた。すごい! 「いえーい! ストライク!」  って健ちゃんがみんなに両手でハイタッチしてくる。すごい! 健ちゃん格好いい! 「次心晴なー」 「任せてー!」  心晴は小走りに走って、ボールを投げる。少し曲がって、半分くらい倒れた。投げるホームがなんだか可愛らしい!  二投目も同じところに転がっていく。ボーリングって難しそう…… 「あーめっちゃ悔しい!」 「ちゃんと狙えよ~」 「狙ってるよー。次なぎさだよ~」  私は心晴と同じ赤いボールを持つ。片手で、振り子みたいに腕を振って――投げる。  ころころ……ガタン。 「あーガーターだ! 惜しい」 「はじめはそんなもんだよ~」  あはは、難しい。帰ってきたボールをもう一度手に取ろうとすると、すっと燈也君が立ち上がった。あれ、燈也君の番だっけ……? 「まず持ち方が違う。さっき健太郎が言ってたろ?」  そう言って私のボールを手に取った。 「ここに中指、ここに薬指。体の横を通る様に腕を後ろに振って、こうやって握手するみたいに手を出す。最初のうちは変な力かけんな」  燈也君が私の腕を持って指導してくれる。なんだか、バスケットボールの時見たい…… 「あ、ありがとう。やってみる」 「腰落とせよ、ちゃんとボール転がせ」 「は、はい先生」  私はボールにきちんと指をはめて、ゆっくり助走をつける。体の横にまっすぐ腕を滑らせて、そのまま握手するように手を前に出した。  球がちゃんとレーンの上を転がっていく。真ん中のピンに当たって、ゴロゴロとゆっくりとたけどドミノみたいに全部倒れた。心晴となっちゃんが「やったー」って歓声をあげてくれる。 「すごい燈也君!」 「いや、投げたのおまえだろ」 「すごいよ! 魔法みたい」 「大袈裟だな」  私はみんなとハイタッチ。次は燈也君の番だ。燈也君のボールは黒くて、更に重そう。 「頑張れ燈也ー!」  心晴の応援のあと、燈也君は軽く助走をつけて投げる。すごくフォームが綺麗。投げたボールはすごい速さで回転して、レーンの上を曲がっていく。右端に投げられたボールは軌道を曲げて真ん中のピンに当たる。ガシャンって大きな音がして、全部倒れた。 「いえーい!」  健ちゃんが拳を挙げてグータッチを促す。燈也君はにっと口角を上げて拳をぶつける。なんか、すごい爽やかだ。男の子って感じがする。    
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