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パルコの裏にあるアリスガーデンでトナカイパンを食べてから、ボーリング場へ向かう。アーケードから少し電車道路側に入ると、ボーリング場のあるゲームセンターがあるのだ。
一階にはたくさんのUFOキャッチャー台があって、カップルとか友達どうして賑わっている。あ、あのウサギのキーホルダー可愛い……なんて余所見をしてると、心晴に肩を叩かれた。
「受付何階だっけ?」
「階段で行こうぜ、競争な~」
「それ、健ちゃんと燈也君がめっちゃ有利じゃん!」
みんなで階段を駆け上る。これ、楽しいけどすごくしんどい……上り終わった後で、心晴先生からお小言があった。
「階段駆け上るのめっちゃ危ない! 転んだら命に関わるよ!」
本当に。もうやりません、今度からはゆっくり上ろう。ボーリング場はちょっと混んでいたけど順番はすぐにやってきた。
「そういえば、私ボーリングやったことない」
ということを今思い出しました。投げ方とか、全然わからない……
「うっそ、そうなの? 家族とかで来ないかぁ、なぎさんち忙しいもんね……」
心晴は自分のボールを早速選んで戻って来た。赤い色の重そうなボールを抱えている。
「一緒にボール選ぶよ。私とおんなじの持てそう?」
心晴の赤いボールを持ってみる。うん、持てそう。重いけど、持てる。
「ここの三つの穴に指を入れるの。えっと、ここが親指で、中指と薬指だっけ?」
「なんで疑問形なんだよ心晴」
健ちゃんが笑いながらボールを持って、持ち方を教えてくれる。健ちゃんのボール、青くて色からして重そう……足の上に落としたらひとたまりもなさそうだ。
「お手本見せるよ。ちょっと投げてくる」
画面には上から出席番号順で名前が映し出されていた。健ちゃんは自分のボールを持って助走をつける。投げたボールはすごい速さでレーンの向こうのピンに吸い込まれて行って、小気味良い音と共に全部のピンが倒れた。すごい!
「いえーい! ストライク!」
って健ちゃんがみんなに両手でハイタッチしてくる。すごい! 健ちゃん格好いい!
「次心晴なー」
「任せてー!」
心晴は小走りに走って、ボールを投げる。少し曲がって、半分くらい倒れた。投げるホームがなんだか可愛らしい!
二投目も同じところに転がっていく。ボーリングって難しそう……
「あーめっちゃ悔しい!」
「ちゃんと狙えよ~」
「狙ってるよー。次なぎさだよ~」
私は心晴と同じ赤いボールを持つ。片手で、振り子みたいに腕を振って――投げる。
ころころ……ガタン。
「あーガーターだ! 惜しい」
「はじめはそんなもんだよ~」
あはは、難しい。帰ってきたボールをもう一度手に取ろうとすると、すっと燈也君が立ち上がった。あれ、燈也君の番だっけ……?
「まず持ち方が違う。さっき健太郎が言ってたろ?」
そう言って私のボールを手に取った。
「ここに中指、ここに薬指。体の横を通る様に腕を後ろに振って、こうやって握手するみたいに手を出す。最初のうちは変な力かけんな」
燈也君が私の腕を持って指導してくれる。なんだか、バスケットボールの時見たい……
「あ、ありがとう。やってみる」
「腰落とせよ、ちゃんとボール転がせ」
「は、はい先生」
私はボールにきちんと指をはめて、ゆっくり助走をつける。体の横にまっすぐ腕を滑らせて、そのまま握手するように手を前に出した。
球がちゃんとレーンの上を転がっていく。真ん中のピンに当たって、ゴロゴロとゆっくりとたけどドミノみたいに全部倒れた。心晴となっちゃんが「やったー」って歓声をあげてくれる。
「すごい燈也君!」
「いや、投げたのおまえだろ」
「すごいよ! 魔法みたい」
「大袈裟だな」
私はみんなとハイタッチ。次は燈也君の番だ。燈也君のボールは黒くて、更に重そう。
「頑張れ燈也ー!」
心晴の応援のあと、燈也君は軽く助走をつけて投げる。すごくフォームが綺麗。投げたボールはすごい速さで回転して、レーンの上を曲がっていく。右端に投げられたボールは軌道を曲げて真ん中のピンに当たる。ガシャンって大きな音がして、全部倒れた。
「いえーい!」
健ちゃんが拳を挙げてグータッチを促す。燈也君はにっと口角を上げて拳をぶつける。なんか、すごい爽やかだ。男の子って感じがする。
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