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平和大通りには色々な光のオブジェが置いてある。音が出たり、乗ることが出来たり、アトラクション感のあるイルミネーションもたくさんあってとっても楽しい。
「見て見て、クジラと写真撮ろう!」
「よーしみんな入ってー!」
健ちゃんがカメラを構えてくれる。いろんなオブジェの前で交代で写真を取り合いながら平和公園まで進んでいく。
「なんか昔より豪華になったかも。数とか絶対増えてるよな」
燈也君にとっては久しぶりのドリミネーションだ。
「確かに毎年増えたりバージョンアップしたりしてるかも。光のトンネルとか」
「メルヘン感増したよね~」
平和公園につくと、電停で解散になる。私と燈也君は同じ方向。向かいの心晴たちが手を振ってくれるので、私も振り返す。
こちら側の電車が来て、燈也君と二人で乗り込んだ。
「綺麗だったね~」
「思ったよりすごかった」
「来年も来ようね~。今年のイルミネーションと間違い探しとかしたら面白いかも」
「そんなに覚えてねぇよ」
楽しく話ながら電車に揺られる。車窓を流れていく景色も綺麗だ。私は鞄の中から、燈也君が取ってくれたうさぎのキーホルダーを取り出す。
「これもありがとう、すごく嬉しい! 大事にするね!」
「そのうさぎ、おまえに似てるよな」
「そうかなぁ……」
私は可愛いうさぎとにらめっこする。どこか、似てる?
「そのぼうっとした顔がそっくり」
「え! 似てる……?」
燈也君は笑いをかみ殺したような表情になる。
「もう、燈也君!」
「あはは、なぎさは面白いな」
「面白くないです!」
私は水色のうさぎを撫でてから鞄に付けてみた。うん、とっても可愛い!
「遅いし、送っていくか?」
「大丈夫大丈夫」
「いや、送ってく。どうせ一駅しか変わんねぇし、なぎさの家からも歩いて帰れるから」
「そうなの? 知らなかった!」
近いんだろうなって思ってたけど、隣の電停だとは……。でも、この辺の駅は一つ一つが離れてるから距離的にはけっこうあるよね。
「そういや言ったことなかったな。今度から電車一緒の時はなぎさの駅で降りるかな」
「嬉しいけど燈也君が疲れちゃうよ」
「そんなやわじゃねぇし。気が向いた時だけなー」
結局燈也君は家まで送ってくれた。家が近づくのがなんだか寂しい。思わず歩みがゆっくりになる。燈也君も私の歩みに合わせてくれる。
ついに私の家が見えた。お店のシャッターがしまっている。
「送ってくれてありがとう! 良いお年を!」
「気が早いな、あ、でもあと今年も数日か……あっという間だったな」
「色々楽しかったよねぇ! 来年も楽しいことがたくさんあると良いね」
「そうだな」って言って帰っていく燈也君の背中を見送る。「気を付けてね」って手を振ると、ちょっと振り返って笑ってくれた。
私は鞄に付けた水色のうさぎと目を合わせて笑う。心の中に、温かな光が灯ったような気がした。
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