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私は、心晴が話し始めるまでじっと待った。心晴はきっと、心の準備をしているのだ、言葉を紡ぐための、準備を――
「なぎさ、私……」
無言のまま、アイスカフェオレを飲み進めで、残りが半分くらいなくなった頃、心晴は漸く話し始めた。
「燈也に、きちんと告白できなかった」
そう呟いて、心晴ははらはらと涙を流した。心晴の痛みが私にも伝わって、思わず私も涙が出てしまう。
心晴の話によると、私と健ちゃんと離ればなれになって、燈也君と二人きりになったとき、心晴は心を決めて燈也君に告白しようとしたらしい。
でも、心晴がなにか言う前に――
「ごめん心晴。その話、たぶん俺は聞いてやれない」
そう、燈也君は言ってきたのだそうだ。
心晴の覚悟はがらがらと音を立てて崩れて、そのまま人混みを掻き分けて、花火も見ずに逃げるように帰ってきた、とのこと。
なんで、燈也君はそんなことを言ったのだろう。私は心晴にかける言葉を必死に探したけれど――見つけることができなくて、その背中をさすりながら、ただ一緒に涙を流した。
でも、心晴の悲しい気持ちがわかるのと同時に、少しほっとしている自分がいることが、嫌になる。
心晴はこんなに苦しんでいるのに、最低だ、本当に、サイテーだ。
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