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「心晴、きちんと伝えよう。心晴の気持ちを、もう一度」
心晴を応援すると決めたのに、揺らいでしまうのは、きっと花火大会の夜、燈也君の優しさに触れてしまったからだ。
その温かくて逞しい体に、触れてしまったから……
でも、もう一度私は自分に言い聞かせる。何度でも言い聞かせなきゃいけない。
心晴を応援しようって、決めたじゃない。
「きちんと言ってあげなくちゃ、心晴の気持ちが可愛そう。ちゃんと燈也君に伝えて心晴――」
だから、私のためにも、もう一度きちんと告白してね、心晴。きっと、燈也君は頷いてくれるよ――大丈夫。
「そうだよね……ありがとう、なぎさ! 私、もう一度頑張る!」
気持ちを強く持ち直した心晴は、そう言っていつもの笑顔を見せてくれた。
ありがとう――そんな心晴の言葉が、笑顔が、私の心に突き刺さる。
心晴、私、お礼を言われることなんて何にもないんだよ。気を抜くとほんの少しでも、上手くいきませんように――なんて思っちゃうような、最低な奴なの。ごめんね、心晴……
なんとか心晴の背中を押すことができて良かった。さぁ、これで大丈夫。そう、私も自分に言い聞かせる。
これで、良いの。二人が上手くいけば、きっと前みたいに五人で楽しく過ごせるようになるはず……それが、私が願うこと――
心晴は、秋にある体育祭で告白すると決めたようだった。
私は――ふぅっと深く深呼吸をして、心の波を鎮める。心晴を応援するのよ、ねぇ、私。
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