朝日 壱

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 ついにこの日が来てしまった。  今私は、卒業十周年祝賀会に出席するために新幹線に乗っています。  前に実家に帰ったのはお正月だったかなぁ……  この年になると、地元の友達もそれぞれ家庭を持ち始めて忙しそう。  結婚式に参加したり、家族で出かけた写真を見せてもらったりする度に、ほっこりと温かい気持ちになると同時に、なんだか寂しくなってしまう。  色々なご祝儀とともにお財布もすっからかん。いや、おめでたいことには大盤振る舞いしないとね!  私、そのために稼いでマスカラ!  これが俗にいうご祝儀貧乏を言うやつでしょうか……。いや、自分に使うあても特にないし、稼いだお金は人のために使うのが一番いい使い方だもんね!  お盆や年末年始は混みあう車内も、なにもない金曜日の夜はガラガラだ。  私は一人で窓際の席に座りながら、車窓を流れる真っ黒な景色をぼんやりと眺めていた。  窓に映る自分の顔が、すっかり疲れていることにびっくり!  なにこれ、すごく、老けて見える……! これではいかん!  独身貴族がいかに優雅で楽しいかを、既婚者のみんなに披露しないといけないというのに!  実際の私はといえば、仕事に追われてプライベートは小説に捧げる毎日……  いや、これも悪くないと思ってるよ。毎日すごく充実してるよ。充実しすぎて、時間が矢みたいに去っていく。
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