朝日 壱

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 頭をぶんぶんと振って、ちょっとにこっと笑ってみる。大丈夫、活き活きして見えるよ、私!  そう気を取り直して、窓の外を見ていると、ふと、昨晩の返信をしていないことを思い出した。  そういえば、昨晩の投稿した時にアカシさんからメッセージが入っていた。この投稿サイト、SNSと連携していて、個人同士が直接メッセージをやり取りできるという機能が付いているのです。  春からのやり取りで、私とアカシさんはすっかり、仲良くなったのです。最初は作品を通してのメッセージのやり取りだったけれど、今は直接メッセージを送り合っているの。  少しずつプライベートの話しも時々するようになって―― 【週末は実家に帰るんだな、俺は仕事を理由にしばらく帰ってないなぁ……気をつけて帰れよ】  というメッセージをもらっていた。出版関係の仕事をしているらしい彼は、一年中いつでもとても忙しそうだった。  そんな中、もはや日記のような私の拙すぎる小説に目を通してくれて本当に嬉しい。  と、同時に文章のプロの人だと思うと、読まれるのが恥ずかしいというのもありますよ。  私はスマホを取り出すと、投稿サイトにアクセス。マイページを開いて、メッセージを打ち込んだ。 【久しぶりの実家でゆっくりしてきます! アカシさんも、たまにはゆっくりしてくださいね】  恐らく、年上だろうと思われる彼――彼はいつの間にかタメ口になっているのだけれど、私は相変わらず丁寧語。  顔の見えない相手だから、余計慎重になってしまう。  メッセージを返し終ると、再び視線を真っ暗な窓の外に移した。僅かな明かりに照らされて流れていく景色がとても懐かしい。
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