落日 壱

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 この学校の言い伝え――というか、ジンクスのようなものがあって、体育祭で告白すると成就する――なんて実しやかに噂されている。  こういうお祭りモードで気分がハイになってるから勢いで付き合っちゃう――とでもいうのか、確かに体育祭後には一時的にカップルが増える。でもすぐに別れちゃうのが多いというのが現実。体育祭マジックの効果は長続きしないようです。 「いないけど、脈はないと思うよ」 「マジか! 日野さん、意外とはっきり言うなぁ……」 「曖昧なこと言う方が不親切だよ」 「まぁそれもそうかぁ、そっかぁ、俺、ダメか」  山野君は一瞬悲しそうな顔になったけれど、潔くからからと笑って気を取り直した。山野君、なんとなく心晴のことが好きなんだろうなぁって感じていたけれど、ビンゴだったようです。  でも、心晴は燈也君のことが好きだから、困らせないでくれよ――なんて思っていると、山野君は再びこそこそと話しかけてくる。 「石川さん、やっぱ平川のことが好きなの? あいつの方は脈ありなの?」  なんてプライベートにがんがん足を突っ込むようなことを聞いてくる。私は困ってしまってはぁとため息をつくと―― 「知らない」  そう返して会話を終えた。山野君はまだ話したそうにしていたけれど、競技が始まったので会話はそれっきり。  心晴さんや、私はあなたに群がる羽虫を一匹退治いたしました。ぴしっ――と心の中で敬礼のポーズをとる。  そうだよ、心晴が好きなのは、燈也君なんだよ山野君。お似合いでしょう? あなたも私も、二人の間に入る余地なんて、どこにもないんだよ。
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