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開始の笛の音と共に、響き渡る声――グラウンドでは砂煙が巻き起こる。
騎馬同士が混戦していて、どこに誰がいるのかわからない。
そんななか、次々に騎馬が崩れて、審判に入る先生たちが勝敗を決していく。
燈也君は、健ちゃんは――どこ? もう崩された?
きょろきょろとグラウンドを見てると、中央で激しく崩し合っている騎馬が見えた。
「ねぇなぎちゃん、あれ、有田君だよ!」
なんて同じ保健委員の陽菜ちゃんが教えてくれる。健ちゃんの騎馬と崩し合ってるのは、五組の子かな?
「頑張れー! 健ちゃーん!」
なんて聞こえるかどうかわからない声を張り上げる。何度かもみ合った後、健ちゃんの騎馬が勝った。
「やったー! あ、あっち、見て、あっちは平川君の騎馬じゃない?」
健ちゃんと同じクラスの陽菜ちゃんと一緒に喜び合ったあと、次に激しく戦っているのは、燈也君の騎馬と、うちのクラスの大将騎みたいだ。
「頑張って、平川君ー!」
なんて、陽菜ちゃんの声援がグラウンドに投げられる。私、ここで燈也君を応援していいんだっけ――?
なんて悩んだのは一瞬――
「燈也君! 負けないで!」
大声が出ていた。それを聞いた陽菜ちゃんが隣で笑っている。
「あはは、自分のクラス応援しなくていいの? なぎちゃん、平川君たちと仲良しだからこういうとき困るよねぇ」
「あはは、ついつい。去年は同じクラスだったから……」
なんて苦しい弁解をする私。陽菜ちゃんとはらはらしながら戦いを見守っていると、最後の最後で燈也君がうちの大将騎を崩して試合は終わり――。
「やったー!」
思わず陽菜ちゃんと手を取り合って喜んじゃったけど、クラスのことを考えたらがっかりするところだっけ? あはは、気にしません。
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