落日 壱

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 開始の笛の音と共に、響き渡る声――グラウンドでは砂煙が巻き起こる。  騎馬同士が混戦していて、どこに誰がいるのかわからない。  そんななか、次々に騎馬が崩れて、審判に入る先生たちが勝敗を決していく。  燈也君は、健ちゃんは――どこ? もう崩された?  きょろきょろとグラウンドを見てると、中央で激しく崩し合っている騎馬が見えた。 「ねぇなぎちゃん、あれ、有田君だよ!」  なんて同じ保健委員の陽菜(ひな)ちゃんが教えてくれる。健ちゃんの騎馬と崩し合ってるのは、五組の子かな? 「頑張れー! 健ちゃーん!」  なんて聞こえるかどうかわからない声を張り上げる。何度かもみ合った後、健ちゃんの騎馬が勝った。 「やったー! あ、あっち、見て、あっちは平川君の騎馬じゃない?」  健ちゃんと同じクラスの陽菜ちゃんと一緒に喜び合ったあと、次に激しく戦っているのは、燈也君の騎馬と、うちのクラスの大将騎みたいだ。 「頑張って、平川君ー!」  なんて、陽菜ちゃんの声援がグラウンドに投げられる。私、ここで燈也君を応援していいんだっけ――?  なんて悩んだのは一瞬―― 「燈也君! 負けないで!」  大声が出ていた。それを聞いた陽菜ちゃんが隣で笑っている。 「あはは、自分のクラス応援しなくていいの? なぎちゃん、平川君たちと仲良しだからこういうとき困るよねぇ」 「あはは、ついつい。去年は同じクラスだったから……」  なんて苦しい弁解をする私。陽菜ちゃんとはらはらしながら戦いを見守っていると、最後の最後で燈也君がうちの大将騎を崩して試合は終わり――。 「やったー!」  思わず陽菜ちゃんと手を取り合って喜んじゃったけど、クラスのことを考えたらがっかりするところだっけ? あはは、気にしません。
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