625人が本棚に入れています
本棚に追加
/344ページ
「健太郎のやつ、過保護なんだよ……ってぇ」
水道の水で傷口を洗うと、沁みるようで燈也君は痛そうに目をつむった。
「健ちゃん優しいからねぇ、でも、手当は早い方がきずの治りが早いよ」
私は洗った傷口の水気を取って、ワセリンを塗る。
「そこ、オキシドールとかで消毒するんじゃねぇの?」
「それだと体の方の細胞も傷ついて逆に治りが悪くなるんだって、沁みて痛いし……今回は湿潤療法を行います」
「へぇ、ちゃんと保健委員してんのか、意外」
「もう、一言余計だよ」
ワセリンの上から、小さく切ったラップをのせて、その上にガーゼを張り付けた。私が作業をしていると、燈也君がなぁ――と口を開く。
「なぁなぎさ、俺が今日のリレーでゴールテープ切ったら、バスケ部の部室に来てくれよ」
「え――?」
「だから、一位になったら、おまえに言いたいことがあるから……」
それは、どういうことでしょうか……? なんて、ぽかんとしている、燈也君がぷぃっと顔を背けた。
おっと、答えてはくれないみたい。作業を続けなければ……
最初のコメントを投稿しよう!