落日 壱

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「健太郎のやつ、過保護なんだよ……ってぇ」  水道の水で傷口を洗うと、沁みるようで燈也君は痛そうに目をつむった。 「健ちゃん優しいからねぇ、でも、手当は早い方がきずの治りが早いよ」  私は洗った傷口の水気を取って、ワセリンを塗る。 「そこ、オキシドールとかで消毒するんじゃねぇの?」 「それだと体の方の細胞も傷ついて逆に治りが悪くなるんだって、沁みて痛いし……今回は湿潤療法を行います」 「へぇ、ちゃんと保健委員してんのか、意外」 「もう、一言余計だよ」  ワセリンの上から、小さく切ったラップをのせて、その上にガーゼを張り付けた。私が作業をしていると、燈也君がなぁ――と口を開く。 「なぁなぎさ、俺が今日のリレーでゴールテープ切ったら、バスケ部の部室に来てくれよ」 「え――?」 「だから、一位になったら、おまえに言いたいことがあるから……」  それは、どういうことでしょうか……? なんて、ぽかんとしている、燈也君がぷぃっと顔を背けた。  おっと、答えてはくれないみたい。作業を続けなければ……
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