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手が震えて、上手くテープが貼れない。それでもなんとか手当てを終えてる。
「騎馬戦、格好良かったよ、リレーも応援してるから」
「なぎさ、俺、待ってるからな」
何を、話すつもりだろう──聞くのが怖い。
そう思うと、燈也君の言葉には答えられなかった。
私は燈也君の少し前を歩きながら、無言で救護テントに戻った。燈也君もそのまま健ちゃんのもとに帰っていく。
「おかえりなぎちゃん、もうすぐ当番の時間終わりだよ~テントと戻ろう」
そうにっこりと教えてくれる陽菜ちゃんと一緒に、私はクラスのテントに向かうんだけれど、その間、今更のように心臓がバクバクと脈を打ち始めた。
心臓の音が大きすぎて、何も聞こえない。
「なぎさお帰り~、もうすぐ障害物じゃない?」
テントに戻ると、四組のなっちゃんが心晴と一緒にうちのクラスのテントにいた。
「点差がさ、だいぶ開いてるよなぁ、四、五組はもうだめだ、ほら、キャラ的に文系だから」
「あーわかる。やっぱ華があるのは燈也の組だよねぇ、チアの子も多いし華やか」
なっちゃんと心晴の会話に、上手く入っていけないくらい、頭の中が動揺している。ダメだ……忘れよう、心を落ちつけよう。
私は大きく深呼吸をする。
「なぎさ、障害物そんなに緊張してるの? 大丈夫、なぎさがこけても想定内だよ」
「……あはは、なにそれ~」
私を心配してくれる心晴の言葉に、ワンテンポ遅れて笑って返す。リレーは全競技の最後だ。もし、一位になったら、燈也君は私に何を告げるのだろう。
俺、心晴と付き合うことになったから――なんて、わざわざ私に言わなくてもよくない? じゃあ、なに……?
もしかして、燈也君も私のことを……
浮かぶ答えに、私は首を横に振る。そんなことは、ありえない。あってはいけない、もう――
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