落日 壱

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 手が震えて、上手くテープが貼れない。それでもなんとか手当てを終えてる。 「騎馬戦、格好良かったよ、リレーも応援してるから」 「なぎさ、俺、待ってるからな」  何を、話すつもりだろう──聞くのが怖い。  そう思うと、燈也君の言葉には答えられなかった。  私は燈也君の少し前を歩きながら、無言で救護テントに戻った。燈也君もそのまま健ちゃんのもとに帰っていく。 「おかえりなぎちゃん、もうすぐ当番の時間終わりだよ~テントと戻ろう」  そうにっこりと教えてくれる陽菜ちゃんと一緒に、私はクラスのテントに向かうんだけれど、その間、今更のように心臓がバクバクと脈を打ち始めた。  心臓の音が大きすぎて、何も聞こえない。 「なぎさお帰り~、もうすぐ障害物じゃない?」  テントに戻ると、四組のなっちゃんが心晴と一緒にうちのクラスのテントにいた。 「点差がさ、だいぶ開いてるよなぁ、四、五組はもうだめだ、ほら、キャラ的に文系だから」 「あーわかる。やっぱ華があるのは燈也の組だよねぇ、チアの子も多いし華やか」  なっちゃんと心晴の会話に、上手く入っていけないくらい、頭の中が動揺している。ダメだ……忘れよう、心を落ちつけよう。  私は大きく深呼吸をする。 「なぎさ、障害物そんなに緊張してるの? 大丈夫、なぎさがこけても想定内だよ」 「……あはは、なにそれ~」  私を心配してくれる心晴の言葉に、ワンテンポ遅れて笑って返す。リレーは全競技の最後だ。もし、一位になったら、燈也君は私に何を告げるのだろう。  俺、心晴と付き合うことになったから――なんて、わざわざ私に言わなくてもよくない? じゃあ、なに……?  もしかして、燈也君も私のことを……  浮かぶ答えに、私は首を横に振る。そんなことは、ありえない。あってはいけない、もう――
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