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「残念だったねぇ」
「……そうだね」
体育祭は、ゴールテープを切った三組の優勝で終わった。体育祭の片づけが終わって、私はなっちゃんと二人で帰路に着いていた。人がまばらになったグラウンドは、少し物悲しく感じてしまう。
「心晴、今頃燈也君に告白してるかな……っ、ごめん」
そう、なっちゃんは呟いてから、慌てた様子で謝ってきた。
「なんで謝るの?」
「……なんでもない、私の勘違い」
「……ありがとう、なっちゃん」
聞かないでくれて、ありがとう。たぶんなっちゃんは、私の横恋慕に気が付いていたのだと思う。気が付いていて、私の決意を尊重してくれていたのだろう。
このあとは、もう、心晴と燈也君の話にはならなくて、今日の体育祭の話しとか、今度の文化祭の話しとか――なっちゃんはそんな話をしてくれた。
でも、ほんの少しだけ考えてしまう。もし、燈也君がゴールテープを切っていたら……私は、バスケ部の部室に行ったのだろうか――?
良かった、燈也君が二位になって。そうじゃなかったら私は、きっと――
心晴、どうか、頑張って、燈也君に、想いを伝えるんだよ、まっすぐに。
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