落日 弐

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「受験の息抜きにもなるし、今年もあぶれた者同士イルミネーションを見に行こう!」  ほら、どこまでも、優しい健ちゃん。追い込まれる冬は、一人でもくもくと勉強していると辛くなる。  高校受験の時もかなり、辛くなって、心晴やなっちゃんと励まし合った。二人がいなかったら今の私はありませぬ。  一人じゃできないことも、みんなと一緒なら頑張れるんだなって実感したんだよね。 「ありがとう、健ちゃん」  健ちゃんの優しさに、心が緩みそうになる。いや、実際に緩んでいる。クリスマスも一緒にいたいと思ってしまう。ズルい私、一人で耐えなきゃいけないのに、一人じゃいられない。弱い私。 「なぎさ、泣きたいときは呼んでくれよ」  健ちゃんは、唐突にそんなことを言ったきた。 「あ、いや、目が赤かったからさ……」  そうでした。私、泣き張らした目でしたよ。ぱんぱんで不細工だよ。かなり泣いたもんね……電車の中で聞かないでいてくれた健ちゃんも、ついついぽろっと言葉が漏れちゃったようです。 「ありがとう」  そういう私の頭に、ぽんっと手を当てて、健ちゃんは、笑った。燈也君と、同じ仕草――ダメだ、また燈也君を思い出してしまう。  涙が、こみ上げてくる――
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