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私たちが家に着いた頃、ちょうど健ちゃんの迎えの車も来ていた。お父さんが、人懐っこい笑顔で手を振っている。
「ありがとう健ちゃん、ちょっと待ってて!」
私は急いでお店に入ると、売れ残りのパンを探す。今日はほとんど売れてしまって、たくさん焼くバターロールくらいしか残ってなかった。
私はバターロールを袋に詰めて健ちゃんのところに戻る。
「今日はこれしか残ってなくて、ごめんね、健ちゃん、ありがとう! 健ちゃんのお父さんもありがとうございました!」
「いつも悪いなぁ、貰ってばっかりだ。このためになぎさのこと送ってるって思われそう」
健ちゃんが申し訳なさそうに言ってくる。
「売れ残りでごめんね」
「何言ってるんだよ、嬉しいよ、ありがとう!」
またな、そう言って健ちゃんは車に乗り込むと、ぶるると音を立てて車は走り出した。
塾はサボってしまったけど、40号キャンバスを描き終えた達成感は大きい。
「明日からはきちんと受験生するぞ!」
燈也君への邪念を抱かないよう、私は無心に勉強することを心に決めた。これで落ちたらシャレになりませんからな!
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