朝日 参

2/3
前へ
/344ページ
次へ
 淡い水色のカクテルドレスに身を包み、私は会場に向かうため、路面電車を降り駅前を小走りに移動する。  少し余裕をもって来たつもりが、思いの外混んでいて、時間がかかってしまった。  会場となっているホテルまでは少し距離がある。今からだとタクシーを使った方がいいかもしれないと、ロータリーに駐車しているタクシーを捕まえるつもりだ。  急がなければいけないのに思わず辺りをキョロキョロ。  帰ってくる度に、駅は様相を変え、すっかり都会っぽい雰囲気になっていて驚く。  上を見てはわぁっと驚いたり、ここには前何があったっけ? なんてキョロキョロとしながら、私は先頭のタクシーに乗り込んだ。  行き先を伝えると、すぐに発車してくれる。後部座席にすとんと体を預けて、私は目をつむった。  ドクンドクン……  心臓が、うるさい。早鐘を打っているのは、少し走ったせいなのか――  いや、違う。彼に会えるかもしれないという高揚感と、恐れ。  恋人がいるかもしれない、結婚しているかもしれない――その事実を、私は受け止められるだろうか。  そんな妄想ばかりが膨らんでしまう。  ダメだダメだ! 今日は懐かしいみんなと会える楽しい日にしなくちゃ!  何があっても、絶対に泣いたりしない。だって、私は、もういい年の大人だ。  あの時とは違う。絶対に、泣かない。
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

634人が本棚に入れています
本棚に追加