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淡い水色のカクテルドレスに身を包み、私は会場に向かうため、路面電車を降り駅前を小走りに移動する。
少し余裕をもって来たつもりが、思いの外混んでいて、時間がかかってしまった。
会場となっているホテルまでは少し距離がある。今からだとタクシーを使った方がいいかもしれないと、ロータリーに駐車しているタクシーを捕まえるつもりだ。
急がなければいけないのに思わず辺りをキョロキョロ。
帰ってくる度に、駅は様相を変え、すっかり都会っぽい雰囲気になっていて驚く。
上を見てはわぁっと驚いたり、ここには前何があったっけ? なんてキョロキョロとしながら、私は先頭のタクシーに乗り込んだ。
行き先を伝えると、すぐに発車してくれる。後部座席にすとんと体を預けて、私は目をつむった。
ドクンドクン……
心臓が、うるさい。早鐘を打っているのは、少し走ったせいなのか――
いや、違う。彼に会えるかもしれないという高揚感と、恐れ。
恋人がいるかもしれない、結婚しているかもしれない――その事実を、私は受け止められるだろうか。
そんな妄想ばかりが膨らんでしまう。
ダメだダメだ! 今日は懐かしいみんなと会える楽しい日にしなくちゃ!
何があっても、絶対に泣いたりしない。だって、私は、もういい年の大人だ。
あの時とは違う。絶対に、泣かない。
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