光華 壱

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 祝賀会のあと、二人で飲みながら心晴が話してくれたのは燈也君のことだった。  心晴はずっと苦しんでいたのだと思う。  私に話す機会をずっと探していたのだろう。成人式のときは、きっと勇気がでなかったのだ。  だって卒業してから、まだ少ししか時が経ってなかったから――心の準備ができていなかったんだと思う。  あれから八年経って、やっと心の準備ができたのだろう。  でも、それを聞いた私の方は、事実を受け止める準備が出来ていなくて……その場では必死に心晴をなぐさめながら、やり場のない想いに、夜中、一人で泣くしかなかった。  あの涙は、なんだったのだろう。悔しい気持ち、悲しい気持ち――? いや、違う。そういう、言葉に表すことができるストレートな感情じゃなくて……  そう、恋心そのものだ。溢れてやまなかった燈也君への恋心が、すっかり行き場を失ってしまって――塞き止めていた思いを、どうしようもできなくなって、私は涙に乗せて、恋心を吐き出したのだ。  吐き出しても吐き出してもなかなか枯れない涙に、正直困ってしまって……次の日の私はひどい顔で新幹線に乗って自宅に戻ることになってしまった。  笑い話なんだけど――まだ笑い話にできていない。
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