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十年ぶりに会う燈也君は、すごく格好いい青年に成長していた。
少年っぽさが抜けて、ちょっとくせ毛の髪の毛とか、彫りの深い顔立ちとか、よりいっそう引き締まった体とか──見ていると自然と顔が赤くなってくる。
「俺は文章を読んだときに、すぐ書いてるのがなぎさだってわかったよ。おまえ、日記みたいな文章だし、名前も殆ど実物じゃねぇか、もっとひねろよ。知ってるやつだったらわかっちまうだろ、俺とか」
ダメだ、穴があったら入りたい。誰か掘って! もしくは至急スコップをください!
「でもおかげでおまえを見つけられた……」
燈也君はそっと私の頭に手を置いて、優しく撫でてくれる。昔と変わらないその仕草に、ぐっと胸が熱くなる。
「なぎさ、久しぶりだなぁ、ずっと会いたかった」
この、込み上げてくる想いはなんだろう。バカだなぁ、私、わかってるくせに……胸が痛くて、苦しくなる。
この痛みは、ずっと抱えていた痛みは、燈也君のことが、どうしようもなくて、好きだって、証なのに……!
「私も会いたかったよ、秋の祝賀会も来なかったし」
「あー、あれな。行っても良かったんだけど、おまえをびっくりさせたかったんだよ。だから欠席したの。あそこで会ったら、今日の感動が薄れるだろう?」
「なにそれ、そんな理由?」
「重要だろうが。俺にとっては最重要事項だ」
そう言って、私の顔がかぁと赤くなるのを見て、少し意地悪そうに口角を上げる─―変わらない燈也君。
ダメだ、好きな気持ちがどんどん鮮明になってくる。
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