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「でも、燈也君小説なんて読むの? あんな完全に女性を意識したサイトに登録してるなんて意外だよ」
そう、それは私の素朴で大きな疑問。私の知っている燈也君が、出会うはずもないサイトだと思う。
「あー、普通はないな。でも、あの投稿サイト、俺の会社の傘下が運営してるから、毎年交代で派遣されるの。去年の春頃はちょうど俺が本社から派遣されてたんだ。それで、おまえを見つけたの。で、クリスマスのデザインがあっただろ? あのときおまえのデザインを見たのも俺、おまえがあの会社に勤めてるって健太郎から聞いてたからな。名前見てさ、名字が変わってなかったから、嬉しかったなぁ」
なにそれ、神様、どうなってるの?
「運命だな」
なんて、少年のような顔で笑う燈也君──私の大好きな笑顔。
「俺は読んでいて面白かったけど、なぎさ、おまえ文章力ないな、おまえは絵を描いてる方がいいよ。サイトのデザインはすごく良かった。あー、でも、グリーンサンタは日本では流行んないと思うわ」
あはは、ですよねぇ。
私のクリスマスのデザインの中に、ちょっと遊び心で夏仕様のデザインもあげていた。昔、燈也君から、オーストラリアはクリスマスのシーズンは夏って聞いたから。
突然、体にふわっとした重みを感じる。
「ダメだ、今日は我慢できるかもって思ってたけど、やっぱ無理だ。なぎさ、俺、おまえに謝りたいことがたくさんある」
燈也君の体は、社会人になってよりガッチリしたみたい。
でも、変わらないこの温かさ──懐かしくて、苦しくなって、涙が溢れてくる。
「私はお礼を言いたいよ」
この、心晴に叩かれた場所で私たちは再会した。
「アカシさん、私の拙い文章を読んでくれてありがとう。私、十年間もずっとモヤモヤしていたんだと思う、でも、ああやって文章にすることで、気持ちを昇華できてたの」
「こら、勝手に昇華すんな」
「だって、一人で抱えておくにはあんまりにも苦しいものだから……」
苦しくて、苦しくて、息が出来ない程に募ったあなたへの想い──
「もう苦しまなくていいだろう?」
想いが、込み上げてくる――はらはらと涙を流す私を優しく包みながら、燈也君はそんなことを囁いてくる。耳をくすぐる優しい声は、昔のままだ。
ねぇ、それ、どういうこと?
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