625人が本棚に入れています
本棚に追加
/344ページ
「なぎさ、俺、おまえのことが好きだよ。高一の春に掲示板の前で見かけたときから、ずっとおまえに恋してきた」
優しく降り注ぐ春の陽光のように、燈也君の言葉が落ちてくる。
嬉しくて、これは私の都合のいい夢なんじゃないかって思ってしまうけれど──大丈夫、夢なんかじゃない。
初めて聞いた、燈也君の気持ち。
「あの小説から勝手に解釈してるけど、おまえも俺のこと……」
「待って、言わせて」
私は慌てて燈也君を制止する。
これは自分で言わなければ──私の言葉で、私の声で、この十二年間の片想いを──
「私も、あの高一の春に掲示板の前で会ったときから、燈也君のことがずっとずっと好きでした、恋をしていました、あなたに……」
言葉にすると、一気に想いが溢れてしまってら私はもう、いい年の大人なのに、涙が止まらなくなる。
愛しい分だけ、涙が出てしまう。
「ずっと、大好きだった。だから、ずっと苦しかった」
はらはらと涙を流す私を、燈也君は優しく抱き締めてくれる。
その温もりに更に気が緩んで、私は十二年分の涙を流した。
最初のコメントを投稿しよう!