閃光 最終章

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「あの日記読んでて思ったけど、おまえ、本当に鈍いなぁ、そんなんじゃモテねぇよ。 それとも、小説仕様にもたもたさせてんの? もたもたしすぎ」  もはや【日記】と呼ばれる私の小説。どうやらツッコミどころが満載のようです。やめてー! 自分で書いておいてなんだけど、これは一種の処刑だ! 「あはは、せっかくのモテ期浪費したなぁって思ったよ~。健ちゃん、もう結婚したから時効だろうけど、まさかね……って今でも思う」 「でもまぁ、なぎさらしいな」  それ、バカにしておいででしょうかね? 「健ちゃんのことを好きになりたいなぁって思ったときもあるけど、やっぱり違うなって思ったんだ。健ちゃんのことが好きな気持ちは、燈也君に、恋する気持ちとは違った」 「違って良かったよ。健太郎は間違いなくおまえのこと大事にしてくれるだろうけど、見てる俺は気が狂いそうだな。もしそうなってたら、早々に日本から逃げてたと思う」  それから語られる燈也君の話しは、実に多岐に渡った。  心晴と上手くいかなかったこと、大学では理系を専攻していたのに、就職は出版社に決めたこと、学生時代は、とくに親しい友人が出来なかったこと、オーストラリアに留学してたこと──  私が話せることの何倍も何倍も濃い時間を過ごしてきたようだった。 「なぎさの絵を見て、出版社に決めたんだ」 「絵? 私の? な、なんで?」 「素晴らしい作品をたくさんの人の目に届けることが出来ないか……なんてずっと考えていた。本物には負けても、印刷物や写真でも十分に発信することができるんじゃないかって……大学ではそんなことばっかり考えていたから」  それって、なんだか、嬉しすぎる。私のことをずっと考えてくれた、みたいに聞こえるよ。
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