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「なぎさ」
彼はおもむろに私を手招きした。
呼ばれた私は煎れたてのコーヒーをテーブルに置いて、彼の横に座る。
ずっと絵を見つめていた彼の瞳が、私に向けられた。
その長いまつげの一本一本が見えてしまいそうな距離に、私の鼓動は蒸気機関車の様に忙しくなる。
「なぎさ、好きだ」
彼の瞳が揺れている。かつて、何度も見たこの瞳。
燈也君は、こうやってずっと伝えてくれていたのだ。
好きだよって──
私はそれに気が付かないふりをしていた。気がついては、いけないと思っていた。
「一緒に、暮らしてくれないか?」
なんて、唐突な告白に私は驚いて倒れそうになる。
それ! 色々話が飛んでない!?
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